グラフィティ・アーティスト、アンナ・ラウリニの刺激

ロンドンを拠点に活躍するグラフィティ・アーティスト、アンナ・ラウリニ(Anna Laurini)が描くのは、抽象表現主義にインスパイアされたダイナミックな作品。彼女のクリエイションを刺激する、5つの要素を紹介。

1

ストリートに何か描かずに過ぎる日などない。

3年前にショーディッチで、最初のストリートアートを描いたわ。私は画家だし、グラフィティの経験もなかったから、自分のスタイルには合わないって思ったの。今でも筆を使って絵を描いていて、スプレーを手に取ったことは一度もないわ! ストリートアートに初めて取り組んでからというもの、すっかりその虜よ……。すっごくスリリングで夢中になっちゃう。手早くやらなきゃいけないニューヨークのような街では特にね。

2

私が描いたこの女の子を見た人が、自分をその子に重ねたり、自分の中に眠るその子に気づいたって知るのは気分がいい。

たぶんこの子が、何かもしくは誰かを思い起こさせるのね。絵を描きはじめて以来、この少女はずっと私とともにある。最初は落書きみたいなものだったけど、なぜとかどうやってとか彼女が誰なのかとかは考えなかった。ただ描いたの。彼女を構成するのは何本かの線だけだけど、仕上がりはすごく強い。彼女は誰にでもなれるけど、特定の誰かではないってところが大好きなの。

3

ザ・ドアーズ(The Doors)を聴くのは、いつだって刺激的。

私のスタジオが静かだったためしはないわ。マイルス・デイヴィス(Miles Dewey Davis)や60年代のジャズナンバー、それにピアソラ(Astor Piazzolla)まで、いつも後ろで音楽が流れているから。若いころ、ザ・ドアーズの音楽にすごく影響を受けたわ。今でもよく聴くの。イタリアで育った私は、ジム・モリソン(Jim Morrison)と彼の素晴らしい歌詞に魅了されてしまったわ。実際、絵の中でもザ・ドアーズの歌詞をたくさん使っているし。

4

ロンドンの雰囲気とクリエイティヴな空気感は、私にとってパーフェクトなの。

イタリアの街よりも、パリとかニューヨークとかロンドンみたいな大都市が好き。そういう場所ではチャレンジできるもの。でも、特にロンドンの多様性が大好きよ。決して飽きることがないわ。どこを見ても、刺激的なものや人を描くためのキャンヴァスがあるしね。ピンクのアクリル絵の具の香りがすると、どこにいても自分の作品を思い出すの。誰もがステキだと思う香りってわけじゃないだろうけど、それを嗅ぐととっても落ち着くわ。

5

同じ女の子を350通りに表現したイタリアのアイコニックなデザイナー、フォルナセッティ(Piero Fornasetti)は、こんなことを言っているわ。「モチーフがいいと思うんなら、何回だって繰り返し使えばいい。それで失うものなんか何もないさ」。

私の作品のいくつかにもこの言葉があてはまることはわかっているけど、他の作品とはまったく毛色の違うものもあるわ。そういうものを繰り返し使うことはできない。苦労した作品は数点しかないけど、それが完成するまでの経緯はどれもユニークなの。「Stay Pure」っていう作品もその1つ。シアン・ブルーという特徴的なメタリックカラーの絵の具を使ったのよ。売り手が他の場所で絶対に売らないから、イタリアのある場所でしか買えない大好きな色なの。

This Week

和洋新旧の混交から生まれる、妖艶さを纏った津野青嵐のヘッドピース

アーティスト・津野青嵐のヘッドピースは、彼女が影響を受けてきた様々な要素が絡み合う、ひと言では言い表せないカオティックな複雑さを孕んでいる。何をどう解釈し作品に落とし込むのか。謎に包まれた彼女の魅力を紐解く。

Read More

ヴォーカリストPhewによる、声・電子・未来

1979年のデビュー以降、ポスト・パンクの“クイーン”として国内外のアンダーグランドな音楽界に多大な影響を与えてきたPhewのキャリアや進化し続ける音表現について迫った。

Read More

小説家を構成する感覚の記憶と言葉。村田沙耶香の小説作法

2003年のデビュー作「授乳」から、2016年の芥川賞受賞作『コンビニ人間』にいたるまで、視覚、触覚、聴覚など人間の五感を丹念に書き続けている村田沙耶香。その創作の源にある「記憶」と、作品世界を生み出す「言葉」について、小説家が語る。

Read More

川内倫子が写す神秘に満ち溢れた日常

写真家・川内倫子の進化は止まらない。最新写真集「Halo」が発売開始されたばかりだが、すでに「新しい方向が見えてきた」と話す。そんな彼女の写真のルーツとその新境地を紐解く。

Read More

動画『Making Movement』の舞台裏にあるもの

バレリーナの飯島望未をはじめ、コレオグラファーのホリー・ブレイキー、アヤ・サトウ、プロジェクト・オーらダンス界の実力者たちがその才能を結集してつくり上げた『Five Paradoxes』。その舞台裏をとらえたのが、映画監督アゴスティーナ・ガルヴェスの『Making Movement』だ。

Read More

アーティスト・できやよい、極彩色の世界を構成する5つの要素

指先につけた絵の具で彩色するフィンガープリントという独特の手法を用いて、極彩色の感覚世界を超細密タッチで創り出すアーティスト・できやよい。彼女の作品のカラフルで狂気的な世界観を構成する5つの要素から、クリエーション誕生の起源を知る。

Read More

『Making Codes』が描くクリエイティヴな舞台裏

ライザ・マンデラップの映像作品『Making Codes』は、デジタルアーティストでありクリエイティヴ・ディレクターでもあるルーシー・ハードキャッスルの作品『Intangible Matter』の舞台裏をひも解いたものだ。その作品には、プロデューサーとしてファティマ・アル・カディリが参加しているほか、アーティストのクリス・リーなど多くの有名デジタルアーティストが関わっている。

Read More

ハーレー・ウェアーの旅の舞台裏

写真家ハーレー・ウィアー(Harley Weir)が世界5カ国に生きる5人の女性を捉えた旅の裏側、そして、ドキュメンタリー映像作家チェルシー・マクマレン(Chelsea McMullen)が現代を象徴するクリエイターたちを捉えた『Making Images』制作の裏側を見てみよう。

Read More

ローラ・マーリンが表現する、今“見る”べき音楽

イギリス人のミュージシャン、ローラ・マーリンのニューアルバムに満ちている“ロマンス”。男っぽさがほとんど感じられないその作品は、女性として現代を生きることへの喜びを表現している。

Read More
loading...