モニカ・ガルザが描く女性のフォルム

モニカ・ガルザは、メキシコ人と韓国人の血を引く画家。自らのイメージと文化をベースに描かれる彼女の作品は、臆することなく体いっぱいに生を表現する女性たちと、そんな女性たちが世界におよぼす影響を力強く表現している。

陽気な女性キャラクターたちがキャンバスいっぱいに文字どおり踊り、戯れ、サーフィンをし、横たわる——そんなモニカ・ガルザ(Monica Garza)の油絵は、とても特徴的だ。アメリカはニューメキシコ州のアラモゴードに生まれ、ジョージア州のワーナー・ロビンスという小さな町に育ったモニカ。ニューヨーク州の私立シラキュース大学で油絵とドローイングを学び、のちにサンフランシスコのカリフォルニア美術大学へと転校した。2010年に同大学を卒業すると、モニカは3年の間、働いたり旅行をしたりして過ごした。この時期に得た人生経験は、彼女に学校での勉強より多くのインスピレーションをもたらしたという。人生勉強の期間を終えるとアートの世界へと自然に引き戻され、現在では油絵に加えて陶芸や彫刻も手がけているモニカは、幾何学模様と鮮やかな色彩を使って彼女自身の文化や人生経験、そして彼女が知るさまざまな女体の形を描き、讃えている。

モニカ・ガルザはこう語る。

「これら女性キャラクターを作り出したのは、わたしがまだ大学で勉強をしていたころ——わたしが見てきたものをわたしの視点から描こうと思いました。わたしの生い立ち、そしてわたしが女性であるということが、なによりも私が作品で描きたいこと。わたしは、象形文字や古代マヤ文明、アメリカ先住民アートに興味があって、そこに端を発して幾何学模様に強く惹かれます。それがわたしの作品にも繊細に織り込まれている——でも、そういった要素を意図して織り込んだつもりはないんです。それがわたしという存在の一部だから、滲み出てしまっているのだと思います。古代文明に生まれた芸術への興味が、わたしの裸婦作品に大きな影響をおよぼしています。裸婦像は美術史において常にもてはやされてきたものだから、女性の裸を描くことに格段の思いを持っていたわけでもなく、もはやヌードをヌードとも思わない自分がいます……ギュスターヴ・クールベ(Gustav Courbet)や、アルテミジア・ジェンティレスキ(Artemisia Gentileschi)といった、女性がくつろいでいる状態を美しく描いた画家を尊敬しています。女性の体が描く、円や四角、長方形といったシェイプが好き。自然が大好きで、そこには女性の体と同様に、そういったシェイプが満ちている。人間の形がお互いに影響しあったり、ほかの物体と影響しあったりして、そこに偶然のシェイプを作り出すのを見るのが大好きです。そして絵ではそれを隠すことができる——それを楽しんでいます」

女性の体が描く、円や四角、長方形といったシェイプが好き。

This Week

和洋新旧の混交から生まれる、妖艶さを纏った津野青嵐のヘッドピース

アーティスト・津野青嵐のヘッドピースは、彼女が影響を受けてきた様々な要素が絡み合う、ひと言では言い表せないカオティックな複雑さを孕んでいる。何をどう解釈し作品に落とし込むのか。謎に包まれた彼女の魅力を紐解く。

Read More

ヴォーカリストPhewによる、声・電子・未来

1979年のデビュー以降、ポスト・パンクの“クイーン”として国内外のアンダーグランドな音楽界に多大な影響を与えてきたPhewのキャリアや進化し続ける音表現について迫った。

Read More

小説家を構成する感覚の記憶と言葉。村田沙耶香の小説作法

2003年のデビュー作「授乳」から、2016年の芥川賞受賞作『コンビニ人間』にいたるまで、視覚、触覚、聴覚など人間の五感を丹念に書き続けている村田沙耶香。その創作の源にある「記憶」と、作品世界を生み出す「言葉」について、小説家が語る。

Read More

川内倫子が写す神秘に満ち溢れた日常

写真家・川内倫子の進化は止まらない。最新写真集「Halo」が発売開始されたばかりだが、すでに「新しい方向が見えてきた」と話す。そんな彼女の写真のルーツとその新境地を紐解く。

Read More

動画『Making Movement』の舞台裏にあるもの

バレリーナの飯島望未をはじめ、コレオグラファーのホリー・ブレイキー、アヤ・サトウ、プロジェクト・オーらダンス界の実力者たちがその才能を結集してつくり上げた『Five Paradoxes』。その舞台裏をとらえたのが、映画監督アゴスティーナ・ガルヴェスの『Making Movement』だ。

Read More

アーティスト・できやよい、極彩色の世界を構成する5つの要素

指先につけた絵の具で彩色するフィンガープリントという独特の手法を用いて、極彩色の感覚世界を超細密タッチで創り出すアーティスト・できやよい。彼女の作品のカラフルで狂気的な世界観を構成する5つの要素から、クリエーション誕生の起源を知る。

Read More

『Making Codes』が描くクリエイティヴな舞台裏

ライザ・マンデラップの映像作品『Making Codes』は、デジタルアーティストでありクリエイティヴ・ディレクターでもあるルーシー・ハードキャッスルの作品『Intangible Matter』の舞台裏をひも解いたものだ。その作品には、プロデューサーとしてファティマ・アル・カディリが参加しているほか、アーティストのクリス・リーなど多くの有名デジタルアーティストが関わっている。

Read More

ハーレー・ウェアーの旅の舞台裏

写真家ハーレー・ウィアー(Harley Weir)が世界5カ国に生きる5人の女性を捉えた旅の裏側、そして、ドキュメンタリー映像作家チェルシー・マクマレン(Chelsea McMullen)が現代を象徴するクリエイターたちを捉えた『Making Images』制作の裏側を見てみよう。

Read More

ローラ・マーリンが表現する、今“見る”べき音楽

イギリス人のミュージシャン、ローラ・マーリンのニューアルバムに満ちている“ロマンス”。男っぽさがほとんど感じられないその作品は、女性として現代を生きることへの喜びを表現している。

Read More
loading...