不可思議な配置と構成で魅了する、ペインター山崎由紀子

彼女はコラージュの手法を用いて、配置や構成に心地良い不可思議さを感じる作品を生み出す。作品のインスピレーション源になるのは、日常生活の中で目につく様々な造形物。今回選んだ5つの造形物をその作品とともに、彼女の世界観を覗く。

インスピレーション元

作品

1

POLAの美容液の画像

これはつい最近の作品で、2月に「春のカド」というグループ展に参加した時に合わせて制作しました。元の画像はInstagram上で出ていた広告を見て、一体何なのか全然わからない形にまず惹かれました。トリミングすると何かビル的な建造物みたいに見えたり、滑らかな波のグラデーションが、美しく女性的でもあり描きたいと思いました。自分の作品に落とし込む際には、まずこの素材を描くならモノクロでいこうと決めて、他にストックしている資料から組み合わせられそうなものを探して行った感じです。下部分に配置している花は、フリー素材としてネットに出ているものです。その他の線的なものは2つの画像を画面上でうまく繋ぎつつ、バランスを取るために感覚で入れています。

インスピレーション元

作品

2

バターを一気に20個にカットできるケース

TwitterのタイムラインでAmazonの広告を見かけました。個人的にこのタイプのバターケースを全く見たことがなかった為に、パッと見全く何に使うものか分からなくて惹かれました。さらに写真なのにベタ塗りっぽく見える質感がイラスト的に見えるし、見れば見るほど変な画像だなと衝撃を受けました。作品にする過程は、正方形の大きめのサイズを描く機会があって、1モチーフでほとんど決まるシンプルな構図がいいなと考えていて、この画像なら主役を張れると思って選びました。

インスピレーション元

作品

3

友人の音楽機材

温度を感じないところが好きなのか、機械っぽいクールなモチーフに無性に惹かれる部分があるんですが、この画像は友人がSNSにあげていたものです。音楽に詳しくないので何の機材なのかよくわかりませんが、写真を加工しているせいで、主線がハッキリしつつも平面っぽく凹凸感が抑えられている雰囲気が、描かれた絵をコラージュしているみたいな違和感があって面白く感じました。作品の仕上げに入れている線は、感覚的ですが何となくカッコつけすぎないように、画面を少し混乱させるねらいで入れています。

インスピレーション元

作品

4

プロレス

自分は顔を描いたりキャラクター的なものを描いたりするのが苦手なんですが、プロレスはシルエットだけでもユニークさが表現できると思って度々描いているモチーフです。この作品は、ベジェ曲線っぽいデジタル風なイラストをアナログペインティングで表現することに挑戦したもので、写真を元に一度、パソコン上で完成体を作っておいて、それを忠実にキャンバスで再現して描いています。プロレスの背景には、何でもよかったのですが色味的に青っぽいものがいいかと思い、ハワイの空の様子を置いたらいい感じに抜け感が出ました。

インスピレーション元

作品

5

切り株

これは去年制作した作品ですが、元の画像はネット上で切り株を通販しているサイトがあって、そこの画像が同じ切り株の前・後ろ・横向きの画像が見られる上に、種類もめちゃくちゃあるのでいい資料にしています。最近のちょっとした傾向で、横位置の大きな作品を描くのに意識が向いていて、それで横の画面に配置できる切り株を選びました。木の表情がかなりあるので、それが目立つように背景は抑えめにしてあります。あとから見て感じることですが、奥行きを感じるように若干のパースがついた素材を、これまた感覚で選んでいたと思われます。別々で収集していたバスルームの写真と額縁の画像の色味が偶然合ったのも、統一感が出てよかったなと思います。

山崎由紀子/ http://zakiyamabun.tumblr.com /1988年京都府出身。画家、ペインター。京都造形芸術大学を卒業後、東京で作家活動を続ける。「アートアワードトーキョー2010」長谷川裕子賞、「1_WALLグラフィック」第10回 菊池敦己賞 受賞。アトリエ野方ハイツ所属。4/25~30まで渋谷区タンバリンギャラリーにて作品展予定。

This Week

和洋新旧の混交から生まれる、妖艶さを纏った津野青嵐のヘッドピース

アーティスト・津野青嵐のヘッドピースは、彼女が影響を受けてきた様々な要素が絡み合う、ひと言では言い表せないカオティックな複雑さを孕んでいる。何をどう解釈し作品に落とし込むのか。謎に包まれた彼女の魅力を紐解く。

Read More

ヴォーカリストPhewによる、声・電子・未来

1979年のデビュー以降、ポスト・パンクの“クイーン”として国内外のアンダーグランドな音楽界に多大な影響を与えてきたPhewのキャリアや進化し続ける音表現について迫った。

Read More

小説家を構成する感覚の記憶と言葉。村田沙耶香の小説作法

2003年のデビュー作「授乳」から、2016年の芥川賞受賞作『コンビニ人間』にいたるまで、視覚、触覚、聴覚など人間の五感を丹念に書き続けている村田沙耶香。その創作の源にある「記憶」と、作品世界を生み出す「言葉」について、小説家が語る。

Read More

川内倫子が写す神秘に満ち溢れた日常

写真家・川内倫子の進化は止まらない。最新写真集「Halo」が発売開始されたばかりだが、すでに「新しい方向が見えてきた」と話す。そんな彼女の写真のルーツとその新境地を紐解く。

Read More

動画『Making Movement』の舞台裏にあるもの

バレリーナの飯島望未をはじめ、コレオグラファーのホリー・ブレイキー、アヤ・サトウ、プロジェクト・オーらダンス界の実力者たちがその才能を結集してつくり上げた『Five Paradoxes』。その舞台裏をとらえたのが、映画監督アゴスティーナ・ガルヴェスの『Making Movement』だ。

Read More

アーティスト・できやよい、極彩色の世界を構成する5つの要素

指先につけた絵の具で彩色するフィンガープリントという独特の手法を用いて、極彩色の感覚世界を超細密タッチで創り出すアーティスト・できやよい。彼女の作品のカラフルで狂気的な世界観を構成する5つの要素から、クリエーション誕生の起源を知る。

Read More

『Making Codes』が描くクリエイティヴな舞台裏

ライザ・マンデラップの映像作品『Making Codes』は、デジタルアーティストでありクリエイティヴ・ディレクターでもあるルーシー・ハードキャッスルの作品『Intangible Matter』の舞台裏をひも解いたものだ。その作品には、プロデューサーとしてファティマ・アル・カディリが参加しているほか、アーティストのクリス・リーなど多くの有名デジタルアーティストが関わっている。

Read More

ハーレー・ウェアーの旅の舞台裏

写真家ハーレー・ウィアー(Harley Weir)が世界5カ国に生きる5人の女性を捉えた旅の裏側、そして、ドキュメンタリー映像作家チェルシー・マクマレン(Chelsea McMullen)が現代を象徴するクリエイターたちを捉えた『Making Images』制作の裏側を見てみよう。

Read More

ローラ・マーリンが表現する、今“見る”べき音楽

イギリス人のミュージシャン、ローラ・マーリンのニューアルバムに満ちている“ロマンス”。男っぽさがほとんど感じられないその作品は、女性として現代を生きることへの喜びを表現している。

Read More
loading...