クリエイティヴな刺激あふれるアートを集めたインスタグラム・アカウントのひとつ、 @thegreatwomenartists では、新しい作家や知られていない者から超大御所や売れっ子まで、素晴らしい女性アーティストの作品がずらりと並んだ、デジタルギャラリーだ。眺めるだけで満ち足りた気分になるこのインスタ・アカウントなら、何時間夢中でスクロールし続けても後悔することなどないだろう。このアカウントの仕掛け人であるケイティ・ヘッセルが、今最も刺激的な10人の女性作家を教えてくれた。
1. アルテミジア・ジェンティレスキ(Artemisia Gentileschi)
バロック様式の画家であるアルテミジア・ジェンティレスキは、女性アーティストなど誰も聞いたことがなかった時期のイタリア・カラヴァッジオで広く知られた存在だった。ドラマティックで荒々しい彼女の絵画は、聖書や古代の逸話を最も進歩的に描いた作品のひとつとされている。
写真左下:アルテミジア・ジェンティレスキの自画像 1630年代
写真右下:『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』1614~20年 「ウィキペディア」より
2. ジャンヌ=クロード(Jeanne-Claude / from Christo and Jeanne Claude)
ジャンヌ=クロードは、創作のパートナーでもあり夫でもあるクリストの助けを借りながら、明るい色の巨大な布で大聖堂や海岸線、さらには群島までをも覆い、ミイラのような姿に変えてきた。
写真下:クリスト&ジャンヌ=クロード『囲まれた島』/フロリダ州マイアミのビスケーン湾/1980~83 Christo and Jeanne-Claude courtesy of Christo 1983
3. ジデカ・アクーニーリ・クロスビー(Njideka Akunyili Crosby)
非凡な才能を持つコラージュ作家ジデカ・アクーニーリ・クロスビーは、家の中を背景にしたポートレイトを通して、現代的異文化社会の1コマを肉感的に描き出す。何層にもなった絵の中の人物を間近で見ると、その作品は彼女の幼少期に頃にナイジェリアで撮影された写真が混ざり合ったものであることがわかる。
写真下:ジデカ・アクーニーリ・クロスビー『And We Begin to Let Go』2013年 © Njideka Akunyili 2016
4. マリーナ・アブラモヴィッチ(Marina Abramovic)
「パフォーマンスアートの祖母」として世界的に知られる、マリーナ・アブラモヴィッチ。いまだ現役で、肉体的および精神的に身体に挑む作品を作り続けている。激しく儀式的な彼女のパフォーマンスには、自らの体に火をつけたりするなどの行為も含まれるため、ファンは涙するほど。
写真下:マリーナ・アブラモヴィッチ『Rythme 5』1974年 © 2016 Marina Abramović, courtesy of Sean Kelly Gallery/(ARS), New York
5. アグネス・ディーンズ(Agnes Denes)
1982年夏のプロジェクト『Wheatfield - A Confrontation』を世に送り出したことで、アグネス・ディーンズはポリティカルかつエコロジカルなアートの礎を築いた。この作品は、自由の女神像とワールド・トレード・センターのある超大都会に2エーカー分の小麦を植えたものだ。とてつもなく力強く、また危険な試みでもあった同作を通して、土地の間違った利用やサステイナビリティに関する問題提起がなされたのである。
写真下:アグネス・ディーンズ『小麦畑に立つアグネス・ディーンズ』、マンハッタンのダウンタウン、バッテリー・パークの埋め立て地にある『Wheatfield - A Confrontation』にて © Agnes Denes 2016
6. アリス・ニール(Alice Neel)
アリス・ニールの手による心理学的なポートレイトは、著名な男性たちを弱々しく描いたり、シッターの傷跡を描写したりするなど、従来の枠組みを軽々と越えるものだった。表情豊かに描かれたその肖像画の数々は、20世紀を生きた人々の歴史を今に伝える、他に類を見ないドキュメンタリーなのである。
写真下:アリス・ニール『The Fugs』1966年 courtesy of James Cohan Gallery / Artsy
7. レイチェル・ホワイトレッド(Rachel Whiteread)
女性として初めてターナー賞を受賞し、ヤング・ブリティッシュ・アーティストのひとりでもあるレイチェル・ホワイトレッド。コンクリートで型抜きした建物、部屋、階段や椅子といったその代表的なスカルプチュアは、人間の手が介在する以前の空間を想起させる。
写真下:レイチェル・ホワイトレッド『無題(階段)』2001年 copyright Rachel Whiteread
8. 草間彌生(Yayoi Kusama)
90歳をとうに過ぎてもなお、水玉模様の鏡の部屋や、無限に広がった網がつくる幻想的な絵画を通して、草間彌生はアート愛好家を虜にし、非現実的な世界へと誘っている。
写真TOP:インスタレーション『ナルシスの庭』/イタリアのヴェネツィア・ビエンナーレにて/1966年 © Yayoi Kusama. Courtesy of Ota Fine Arts, Tokyo/Singapore, Victoria Miro Gallery, London, David Zwirner, New York.
写真下:インスタレーション『無限の鏡部屋』『男根の庭』/ニューヨークのR. Castellane Galleryでの個展「Floor Show」にて/1965年 © Yayoi Kusama. Courtesy of Ota Fine Arts, Tokyo/Singapore, Victoria Miro Gallery, London, David Zwirner, New York.
9. カラ・ウォーカー(Kara Walker)
アフリカ系アメリカ人のアーティスト、カラ・ウォーカー。人種、アイデンティティ、ジェンダー、そしてセクシュアリティといったテーマを想起させる、パワフルでポリティカルな切り絵作品が有名だ。しばしば“奴隷制度”を主題として取り上げる彼女は、ブルックリンのドミノ・シュガー・ファクトリーを、スフィンクスのかたちをした女性の巨大像で埋め尽くしたことでも知られている。それは、元砂糖工場であるその場所の歴史に呼応した作品だった。
写真下:カラ・ウォーカー『繊細さ、あるいは素晴らしきシュガーベイビー』 Courtesy of CreditSara Krulwich/The New York Times
10. 崔岫闻 サイ・シュウウェン(Cui Xiuwen)
崔岫闻が最近手がけた実験的な写真作品が描き出すのは、不安、脆弱性、そして思いやりといった、現代中国における女らしさにまつわる問題だ。夢の中のような情景を窃視的に表現した作品を通して政治的問題を提起することで、彼女は中国人女性のために現代アートを改革しているのである。
写真下:崔岫闻『天使 no.3』2006年/写真 image courtesy of the artist