ピンクッション
はじめて見た時、異様な咲き姿に興奮してしまった。
針刺しに針をたくさん刺しているような咲き姿が特徴であるこの花の生まれは南アフリカ。女をテーマに制作した「flora」を制作した2年後、日本とアフリカで咲く花が違うように、女たちもまた、暮らす環境によって思想や価値観が違ってくること、また時を百年、千年と遡れば違う女が見えてくることに気づかせてくれた花。
ビオラ
冬になるとベランダでよく育てていた。花が咲いては摘んで押し花にしていたが、いくら摘み取っても次の日にはまたすぐ花は咲いていた。そんな記憶があってか、『flora』の骨盤部分にたくさん使ったこの花は、子宝に恵まれるようにと願いを込めていたのかもしれない。
紫陽花
紫陽花が咲いている情景が好きだ。雨や曇りの少しグレーな風景にパッと色をさしている。その瑞々しさが好きだ。そして紫陽花の血の気が引くようにじっくりと枯れていく姿もまたたまらない。私はその姿に人の生き死にを妙に重ねてしまう。
アルストロメリア
一つの花のなかに、グラデーション・斑点、雄しべの曲線など様々な表情があるこの花は、色も様々で、見たことのない色を花屋で見つけるたびに買ってしまう。昆虫が甘い蜜や香りに誘われて引き寄せられるように、私もアリストロメリアの咲き姿に魅せられてしまっていた。私は花に操られているのではとさえ思えてきたことがある。
バラ
100本のバラを旦那さんにもらったことがある。100本のバラの香りはこれまで知っていたバラの香りとはまた違い、生々しかった。バラが地球上に現れたのは5000万年以上前といわれているらしいが、何万年も前の人も同じ香りに魅了されていたかもしれない。
左から、紫陽花・ピンクッション・アルストロメリア・ビオラ・バラ。
多田明日香/アートディレクター。2010年武蔵野美術大学 基礎デザイン学科を卒業。2012年、押し花で女性の骸骨を形づくった作品『flora』を自費出版。2015年、同作品を飛鳥新社から再度出版。現在、広告代理店にてアートディレクターとして働く傍ら、消費されるのではなく、人々の生活の中で手元に残り、身につけるものを作りたいという想いからプロダクトプランドを立ち上げ、自身のグラフィック作品をプリントしたスカーフを、スパイラル青山「MINA-TO」にて展開中。