Charles –またはCharlotte Linden Ercole Coe – として知られる彼女は、そのパーソナルな音楽をLAにあるベッドルームで自主制作し配信している。DIYミュージックにありがちなローファイで単純なクオリティーを超越する彼女の音楽は感覚を遮断することによって引き出され、ひとりの空間である車の中で録音される。この卓越したドリーミーな「自分のベッドルームに閉じ込められたイタロ・ディスコ 」はシンプルなシンセのループと調和するリリックで、彼女の失恋への下り道(her first album Cactus Milk)を記録したり、人が失敗や苦悩からいかに学ぶか(That’s How Baby Learns)を考え込んだり。 多くの題材が暗めの内容にかかわらず、 ロサンゼルスで会った彼女は、赤い髪をした太陽の光のような人だ。茶色のフリースを着て、『Napoleon Dynamite(ナポレオン・ダイナマイト)』が人生を変えた映画だと主張する彼女は実年齢よりも10歳は年上のような雰囲気を漂わせていた。
いつからその名前になったのですか?
安っぽく聞こえてしまう(決まり文句的)ということは百も承知だけど、今までずっとCharlesと呼ばれてきたし、もう一人の自分というよりも自分の名前そのもの。私の出生証明書はCharlotteだけど、これまでもずっとCharlesで通ってきてる。
あなたは車の中で音楽を作りますよね。私が思ったのは、それだけ切羽詰まって吐き出さなきゃならないものがあるから、と言う感じがするのですが、合ってるかな? そうでなければ、スタジオで録っていますよね?
そのとおり。音楽を作ることになると、私は暴力的なまでにせっかち。信憑性を保ちたいとかではなくただ興奮してしまう。曲を作る時はだいたい、1日か2日くらいをかけてパートを作って、数時間でヴォーカルを録って、リリックはその場で書いているから、シンプルで正直なんです。車の中で録るのは、妹と住んでいて、自分の部屋で同じバースを何度も歌っているのを聞かれると自分を晒し出しすぎてる気がして、恥ずかしい。 だから他の住民がいなくなる深夜にガレージに行って座り込むといい時間が始まるの。
感覚を孤立させた中で音楽を作ることはあなたの感覚をより高めますか?
そう。人目を気にすることがなくなるからひとりでいる時は自分が良いと思ったことができる。大抵のインスピレーションの多くは私の人生を壊すか、劇的に向上させる他人との関わりによるもの。でもそれを曲にするとなるとひとりにならないとできない。
それでは、誰かとのコラボレーションは問題外?
誰かの曲をお手伝いすることはあるけど、自分の作品となると誰かを私の部屋に入れようとは一切思わない。盗用に関して言うとたくさんの未解決の問題があるので、自身の作品とのコラボレーションというのは、ほぼ不可能に近い。16歳の時、精神病質者(サイコパス)で、友人の生物の宿題をまんまコピーしてしまったことで2年間ほど精神崩壊状態だったし。それが原因で自分が生きているべきか悩んだほど。当時の私は、もし私が宿題をコピーしたのなら、そのことに対して懸念されること以外は、別に何もしていない、と本当に思っていたから。例えば、もし私が良い大学に行って、良い仕事に就いたとしたら、それは、たった一度だけの宿題のコピーによって、不相応に良い成績を得たということにつながってしまう。私たちが住んでいる世界を考えると、 今となっては、なんて小さな問題だったんだろうと笑ってしまうけど。それ以来、全てを自分だけでこなすことに驚くほど敏感になってしまった。生活のために映像をディレクションして編集する仕事をしているけど、基本的には、全て自分でやっていて、それが良いやり方ではないこともわかってるから、ようやく人にも任せることができるようになってきたけど、最終的にはやっぱり1人でなきゃできない。
音楽の制作同様、深夜に車の中で、映像の編集者として仕事をされているんですね。
この2つは制作の工程がとても似ていて、そもそも初めに音楽を作ることを夢見た理由は、映像とアルバムのカバーができるようになったから。逆算して、アルバムタイトルやミュージックビデオを思いつき、アルバムのアートカバーまで考えたということ。
ロサンゼルスはあなたのクリエイティビティ(想像力)に影響を与えてくれますか?
もちろん、ここは特殊な人種のるつぼだし。例えばハリウッドブルバードにいるような子たちは間違いなく私のインスピレーションとなってる。
インターネットは創作の自由を広げてくれる?
もしインターネットがなかったら、私のみたいな人間を創りだすことなんてできない。本当に素晴らしいことだと思う。これまで私の身に起こってきたことは全てインターネットがあったから。作ったものが、知らない人たちの目に止まったり耳に入ったりすることに興奮させられるし、その先どこに行くのか誰にもわかりません。それはまるで食料品店の外にあるコインを入れたら景品が当たるガチャポンのような、ただし手に取ることができないようなもの。何が当たるかわからないけれど、たまに凄いのが当たったり。ロサンゼルスに引っ越した理由はインターネットで見つけた人を大好きになってしまったから。これってミレニアム世代であることの日常のひとつ?(笑)
それはこれまでのアルバムに影響を与えてますか?
最後の1枚を除いては、私の最初のアルバムCactus Milkがまさに大失恋中のことについて書いていて、その後は完全に吹っ切れて、前に進み、実際の彼氏を持とうという気持ちが「How Baby Learns」に。実際に周りにいる身近な存在の人たちのことを考えて作ったもので。これは避けて通れないものだと思う。
他に、人生を変えてしまうような出来事2つほど教えてください。
『Napoleon Dynamite(ナポレオン・ダイアモンド)』を見たときに全てが変わり、今の私を形成しているように感じる。この映画のすべてのショットが私の憧れの姿になって、映画の音が私を音楽好きにしてくれた。初めて買ったCDで、どれもが70年代の中米のオルガンにインスパイアされた曲ばかり。Casioのキーボードを買い、曲や詩を書くことになったのは、 人生初のコンサートでNeon Indianのライブを見た時、すぐにebayでカシオを買って1年も経たない間に彼らのショーの前座になり、これらの出来事が私の人生を決定付けたと思う。もし、大切なことをやっていないと思うのなら、ただやるだけのことなのよ。