「キャラクター」 —既存のモチーフを「自分の物にする」
大学生の時、「既存の写真や絵の中の目を、私の作った目に描き換えたら、目はアイデンティティを示す物だから、その絵や写真のアイデンティティを自分のものにできる」と思って、オリジナルの目を開発しようとしました。それがこのキャラクターの起源です。自分のものにする、というのは「絵や写真などの情報を咀嚼して理解する」という感覚に近いです。なので、私の中で、絵を描くということの動機のひとつに、アカデミックな芸術作品から雑誌や広告の写真、街に溢れる落書きに至るまで、自分の触れた様々な「情報」を咀嚼するという感覚があるのかもしれません。「他作品への理解」と「自らの創造行為」に因果関係があるという気がしています。
「モチーフ」 —主観と客観のバランスを保つ
私の創作は、目を描くことによって既存のモチーフを「自分の物にする」というところから始まっており、写真や映画のワンシーンや名画からもモチーフを得ており、作品の中で表現してきました。自分の心象をモチーフにしたこともありましたが、オリジナルの「目」と心象を組み合わせると、「私の感情」が前面にでて閉塞感のある感じがしてしまい、しっくりこなかったので、自分の主張は「目」にとどめて、他の要素は既存の名画や写真などをモチーフにした「個人的に思い入れのないもの」という組み合わせが、いまはしっくりきています。
「原始的な形への模索」 —単純化された形のもつ原始的な感覚を
最初は、名画や写真を描き写したものに、目を重ねて描くだけでしたが、目の書き方は徐々に表現しやすいように単純化されて、それと並行して描き写しであっても体の書き方も抽象化されていきました。既に著名な絵画やアイコンにオリジナルの目を乗せて表現している方は沢山いるので、それらの作品群とは差別化したいという思い、直感があり、今の作風に行き着いています。土偶や部族などの人形やテキスタイルパターンなど、「単純な形で構成されている物が持つ時代や地域を超えても感じられる強さ」みたいな所から、インスピレーションを受けることも多いです。形を原型よりあえて単純化して崩して描く事を、これからもっともっと突き詰めていきたいです。
モチーフに個人的な思い入れのあるものを使いたくないのと同様、作品を通して私の感情を共感してもらうことより、元のモチーフは何であれ出来上がったものが形状として、ビジュアルとして「面白い」と思ってもらえる方が、時代性を越えて普遍的に親しみやすいものになると思いますし、自分が作品を通して訴えたい「感覚」だと思います。
「色使い」 —単体ではなく「組み合わせ」でイメージを
これも既存のモチーフを「自分のものにする」発想の一部なのかもしれないのですが、色は自分の好きな色に変えて、自分の方に寄せたいという感覚があります。カラフルな色合い、特に「色単体」というより「色の組み合わせ」に興味があって、それぞれの色を引き立ててくれるような配色を採用しています。あまり湿っぽくならないカラッとした印象の組み合わせが好きです。
「作品の在り方」 —平面と立体、それぞれの表現
キャラクターは基本的に二次元の存在ですが、今自分が存在する三次元の世界と接続させるには、どういった手法を用いるべきか活動当初からずっと考えてきました。平面に描いているだけだと、どうしても次元の壁が乗り越えられない瞬間があるので、透明な板に描いて背景を透かしたり、鏡に描いて現実を絵の中に写し込んだりと、試行錯誤を繰り返しながら作品に落とし込んできました。最近では、より三次元的な表現として立体にも取り組んでいます。
絵を描くことから始まっているので、平面的な考えから離れることは難しいですが、平面でも向きを変えて組み合わせれば立体になることに気がついて、そこから「平面の立体」という表現方法で作品を制作しています。また、立体にすることで、単純に壁に絵を掛けるという見せ方だけでなく、屏風や衝立のように「空間を仕切るため」に作品を置くことによって、作品の在り方の可能性も広がると感じています。
Colliu /(http://colliu.com)アーティスト・モデル。目が特徴的で図形的な人型のモチーフを中心に、ドローイング・絵画・立体作品など、様々な手法を織り交ぜながら独自の世界観を発表している。6月30日より「Calm & Punk Gallery」にて、個展を開催予定。(http://calmandpunk.com/)