個展 『PANDY』より(2004年)
Photo by courtesy of the artist and YAMAMOTO GENDAI
極彩色
普段、創作の際にはアクリルガッシュを採用することが多くあります。アクリルガッシュを好んで使用するきっかけとなったのが、まだまだ作家として半人前だった学生時代に出合った画材屋でした。店頭でそれらを見つけた時には、蛍光色の一群が放つ異世界的な鮮やかさにとても魅了されました。「この色全部使ってみたいな」と思い、まるで一目惚れをするように全色を購入しました。この出合いを契機に極彩色の絵を好んで描いていくようになったんです。グラデーションが視覚に訴えかける、一度見たら忘れられないような抵抗不能な魅力にどんどんはまっていきました。蛍光色を始点として、グラデーションを重ねていくと、途中段階もますます派手な色になるので、作風も現在のような一見してカラフルな作品になっていきました。
個展 『旅行♪』より(2015年)
Photo by courtesy of the artist and YAMAMOTO GENDAI
フィンガープリント
高校時代に、美大に進学するために通っていた美術予備校で、フィンガープリントという表現法を編み出すことができました。美大の入試では、絵を描く実施時間が決まっているため、絵の内容よりも描いた量、どれだけキャンバスを色で埋めることができるかに挑戦しようと思い、なるべく早く絵を描く方法を考えていました。そしてある授業の際に、指先に絵の具を付着させて、スタンプのように押していく現在の手法にたどり着きました。スタンプのように丸を描いたら顔を描きたくなる欲求が生まれる現象があると思うのですが、その感覚と同じく、指先で押した絵に顔を描いてみたらとてもしっくりきました。これがフィンガープリントの誕生のきっかけです。
個展 『できやよい』より(2007年)
Photo by courtesy of the artist and YAMAMOTO GENDAI
細密描写
学生の頃、好奇心もあり自然と様々なサイズの筆を使うようになりました。その中でも最も描きやすかったものが、極細ペンのようなとても細い筆だったので、自然に絵も細くなっていきました。描きたいものももちろんそうですが、どちらかというと「描きやすさ」を優先して作業道具を選んでいました。筆の扱いが雑な性分のために、絵の具がついたまま洗わずにほったらかすことが多くて筆先が一部固まったりして、その固まった箇所をハサミで切っていったら、自ずと筆先は日を追う毎にさらに細くなっていきました。そういった自らの性分と偶発的な経緯もあり、細密描写が自分の作品の特徴の一つとなっていきました。
個展 『Flags』より(2017年)
Photo by MOTOSUKE KASHIWABARA
マイノリティー
ここ数年、フィンガープリントの手法を用いて世界各国の国旗をモチーフにした絵を描いています。今年の展覧会のテーマを決める際に、世の中に存在する国旗の色合いが、どれもこれも同じ色ばかりで、そうではなくて自分の作風に合うような、カラフルな旗をモチーフにしたいという思いがあり、探しまわった結果たどり着いたのがLGBTの旗でした。好みの虹色だったので、他にもそういった類の色彩の旗がないか調べてみたら、レインボーフラッグだけでなく、セクシュアルマイノリティを表す旗の全てが、どれも好みのカラフルな色合いだったことと、近年の自分の目的意識とも近いものがあったため、これは絶対に描きたいという思いがあり、展覧会のテーマを「マイノリティフラッグ」としました。
個展 『パイナップル』より(2010年)
Photo by courtesy of the artist and YAMAMOTO GENDAI
南国
20代前半の頃に、イタリアに数年移住していたのですが、初めて住んだ場所が南イタリアの海の街でした。街中ヤシの木だらけで、海の眺めもよくとても綺麗で毎日ビーチに通っては南国リゾート生活を送っていました。それ以来、南国の独特のエキゾチックな雰囲気にはまってしまい、絵にも南国のモチーフを度々登場させるようになっていきました。普段から描いている作風とも相性が良く、蛍光色の絵の具にもぴったり合うのでよい出合いでした。
できやよい / 1998年京都芸術短期大学卒業後「日本ゼロ年」(水戸芸術館)や「ヴェネチア建築ビエンナーレ」多数の国際展に参加。指の腹に絵具をつけ画面に押すフィンガープリントとその上に顔を描く独自の手法を用いています。細筆を使い極細の線のグラデーションで仕上げられた超細密描写が得意。最近は南国をモチーフにした作品が多い。
TOP PHOTO:MOTOSUKE KASHIWABARA/個展「Flags」より(2017年)