人生を謳歌する作家ソフィー・エヴェラードのフィジカルに生きる喜び

昨今の世界は狂気じみている。人々の五感は魅力的な外的物質へと惹きつけられるが、それが現実世界に取って代わってしまったとき、その脳や心、精神にはいったい何が起こるのだろうか?

人々の心を虜にするタブレットやスマホ、パソコンによって、私たちの注意力や触覚は鈍ってしまっている。TwitterやInstagramの投稿を無視するのは犯罪並みの悪事だし、Facebookのポストを見ないでいることを神様は許してくれないだろう。あなたも、私も有罪。そんな気分にみんなが毒されているのが現代社会だ。そんな電脳文化のすべてが五感を激しく刺激するものだから、風のそよぐ音や小鳥たちのさえずりなどといった周囲のものに対する反応が鈍くなってしまった。

ストレスや不安はいつでもいっぱい。目線はスマホを見るためにいつも下向きで、姿勢は前かがみ。だが、目線を上に向け、耳を澄ますことで得るものはとても多い。意識と身体を外に向け、冒険し、呼吸し、動き、そして生きるのだ。木のてっぺんに目をやり、胸いっぱいに空気を吸い込んで、足元を流れる水の匂いと音を感じる。シンプルなアウトドア・アクティヴィティを通して、少しずつ鈍磨した五感を研ぎ澄ましていくのだ。自然の贈り物は、途切れることなく私たちにもたらされている。

私たちの体はびっくりするような動きにも対応できるし、その五感は自然と結びついたり刺激を受けたりするようにできている。それが人間であるための最も重要な素養だからだ。こうしたアクティヴィティやアウトドアを行うことで受けられる恩恵は、非常に多い。活動レベルを上げ、不安を取り除き、幸福感を増し、高血圧を緩和し、心臓発作や糖尿病、肥満などのリスクを減らす。また、太陽のもとで活動することで睡眠リズムが整えられ、免疫システムが向上するのだ。それに、軽やかな足取りがもたらす効果も忘れてはいけない。生きているという感覚を持つことで、身体的にも精神的にも、日々の生活を乗り越え、楽しむことができるようになるのだ。

サーファーや登山家、ハイカーやバイカー、それにスノーボーダーやスキーヤーは、よく理想の人生を送る人たちとして名前が挙がる。彼らのイメージといえば、よく日に焼けて引き締まった肉体を別にすれば、自然との結びつきと、全力でスポーツに挑むことで蓄積され、磨き上げられた五感である。すべてを冒険と専門分野に捧げ、五感を刺激し、体と心を磨きあげているそんなアスリートたちは、スポーツを通してスピリチュアルな悟りを得たとしばしば口にすることがある。

母なる自然とつながり、満ち足りて頭がすっきりしたとき、人生はスピリチュアルな意味を持つようになるのだ。激しいスポーツをするアスリートは、危険な場所や認知が及ばないところに自らを投じる傾向がある。これは、自分が危険と感じるかもしれないレベルに、その肉体を向かわせるためだ。その行為がもたらす高揚感、冒険、恩恵、そして幸福感には、よく“ナチュラル・ハイ”という言葉が使われる。人工的もしくは仮想世界でのハイな気分とは、比べようもないものだ。

波に乗っているときに海に身を委ねる感覚。サーフィンの合間にボードに座って日の出を見るとき、母なる自然の中に自らを投じる気持ち。まったく特別なことではない。自転車で斜面を降りるときに風が顔をかすめたり、木の香りが鼻腔をくすぐったりすること。ビーチを疾走する自分の目の前で日が沈んでいくのを見ること。カーブを描きながら雪山を滑る身体を、凍てつく空気が襲うこと。そして、紅葉した葉の匂いと青い空、足元でパリパリと音を立てる枯葉に囲まれて、近所の公園をランニングすること。それらすべてが、どれほど気持ちよいことか。

過剰なヴァーチャル刺激による不調を、市販薬で取り除くのは簡単だ。だが、人間であることの本質は、アウトドアやアクティブな活動、そして今を生きることによってこそ活力を得るのである。ソフィー・エヴァラードは「Mad to Live Retreats」を主宰している。詳細は madtoliveblog.com をチェック。

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