フォトグラファー、画家、歌手として知られるウェン・ジュン(Wen Jun)。2009年当時はグワイリーというポストパンクのバンドでヴォーカルを務め、仲間とともに歌い、演奏し、暮らしていた。この頃、ウェン・ジュンは飾らぬグワイリーの姿を写真ドキュメンタリーとして撮り始めるようになる。それが、中国の首都に広がるアンダーグラウンドなポストパンクシーンに生きる若者の生活を赤裸々にとらえた作品となったのだ。メンバーの多くがひとりっ子家庭の出身であったため、そうした経験を通して仲間たちは強い絆で結ばれるようになり、バンド解散後もその関係は続いている。現在上海に拠点を移したウェンは、近しい友人たちにインスパイアされながら、写真や絵画を通して自分自身を表現し続けている。音楽も、いまだウェンの人生には欠くことのできない要素だ。しかしそのサウンドは、自身の内面や外面の変化にともなって、グワイリーのアグレッシヴなパンクサウンドに比べ、ソフトでメロウに変わった。自分の興味のまま、直感的に学ぶ彼女は、トレーニングを受けた経験がない。それゆえ、彼女の作品は自分の内面とその世界を正直に映し出す、他に類を見ないものとなったのである。