モデル・中川えりな ミレニアル世代の民主主義に不可欠な5つのファクター

学生団体『SEALDs』の元メンバーであり、現在はカルチャーイベント『Making-Love Club』等を主催するモデルの中川えりな。女性ならではの視点で語る、彼女がいまのミレニアル世代に問いかけたいこと、民主主義について思うことについて聞いた。

1

「言葉」 —自分で考え、自分の言葉で話すこと

 服を着る際に、その服が持つストーリーを大切にして着るみたいに、自分で「行動」を選び取ること。選挙で誰に投票するか、選挙には行かないと判断することも政治的行為のひとつ。自分が選び取る行為として、その行為に対しては責任を持つこと。

 私は自分の意見を言ったり、行動したりするけど、それはたくさんの人が自分の意見に同調してほしいからではない。私は、多くの人が自らの行為について各々自分の言葉で話すようになって欲しいと思うし、私と違う人のそれを聞きたい。

2

「懐疑」 —自分だけは安全圏にいるという思い込みを捨てる

 自分こそが正義だと思い込むことはとても危険。そういうものは大抵、誰かを悪者に仕立てあげるだけの偽物の、不都合を遠ざけようとしているだけの意見だと思う。何か意見を述べている人に対して、誹謗中傷をネットに書き込む人がいる。意見を言っている人を単に非難するのではなくて、その出来事に対する自分の意見を書くべきだと私は思います。意見に対して中傷で返すのではなく、意見と意見を交わす、生産的な議論が社会をよりよいものにしていくのだと思う。

 私たちには情報を選び取る自由があるけど、見たい情報しか流れてこないようなメディアを選び取ることはとても危険。ネットニュースやまとめサイトみたいな、ちゃんと責任をもって書かれていないような記事を安易に信じないようにしたい。

3

「議論」 —自由な議論をするために空気をどう「読むか」、どう「読まない」か

 法律に触れること以外に「やってはいけないこと」や「言ってはいけないこと」を定めているのは、私たちの空気や慣習。今の世の中では、ある出来事について「こう見るべき」、「こういう意見を言うべき」というのが強すぎる。一番議論するべき内容が隠されたりして、建設的な議論が生まれなくなる。どこまでが自由で、どこまでが暴力なのか線引きが難しいように、世の中には簡単に白黒つけられないことがたくさんある。継続的な議論が必要な問題とちゃんと向き合うには、ひとつの意見を押し付けずに、多様な意見に耳を傾けるべき。そのために私は「これでいいのかな?」「本当にそうかな?」という疑問を、社会にも、自分自身にも投げかけ続けたい。

4

「個性」 —個性はそれだけで価値があるもの

 個性的なものに見慣れなくなった世の中は、人と「違う」ことをしている人の気持ちを理解できなくなる。少数派の意見に耳を傾けられなくなると、他の人に空気を読むことを強制してしまう。だけど多数派がいつも正しいなんてありえない。多様性が受け入れられる世の中になるために、自分の個性を消さないこと。

5

「怒り」 —ポジティブなバイブスを持つ

 今の世の中がこのままでいいなんてありえない。報道の自由度ランキングが世界で72位だったり、あれだけ安全だと言われていた原発が爆発したり、この国では戦争が起きていなくても、政府は戦争に加担しているし。テロが頻発していることは、世界にある歪みが大きくなってきている証拠だと思うけど、私たちはそこから目を背けるために「頭のおかしな人たちがやってること」って単純に考えがちだと思う。歴史を振り返ってみても人間は、差別や戦争など、たくさんの罪を犯してきて、今の世界でも取り組むべき問題がたくさんある。過ちだと思うことには、「怒り」というポジティブなバイブスをもとに、それに対抗していこうとする姿勢を示すことが大切なことだと思う。

中川えりな/1996年生まれ。学業の傍らモデルとしても活動。学生団体『SEALDs』の元メンバーであり、現在はカルチャーイベント『Making-Love Club』を主催する。第3弾となるイベントを9月7日に開催予定。現在はこれまでのイベント内容を収録した議事録を作成中。

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