リサ=カインデ・ディアス(Lisa-Kaindé Diaz)とナオミ・ディアス(Naomi Diaz)は、デュオ・グループ、イベイー(Ibeyi)としてステージに立つときも、スタジオで音楽づくりをするときも、お互いを尊重し、讃え合う双子姉妹だ。あのブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(Buena Vista Social Club)のパーカッショニストのひとりを父親に持つ彼女たちは、音楽に生まれ、音楽に育った。ナオミはペルーに古くから伝わる箱のような形をしたドラム、カホンや、ヨルバの伝統的なドラムのバタを演奏し、リサ=カインデは曲を書き、歌う。バンドでの役割こそ違うものの、ふたりが目指すものはひとつだ——自分たちの心に芽生える感情を官能的でソウルフルなメロディで表現するということだ。ロンドンでセカンド・アルバムを制作中のふたりが、これまでに感銘を受けた思い出や、音楽業界で成功するための秘訣について話してくれた。
今日は何を?
ナオミ:ロンドンで2枚目のアルバムを制作中です。新しい曲を作れるのが嬉しいです。音楽は、説明が必要ないから素晴らしい。「何だか分からないけれど好き」でも良い——そこに感じるものさえあればそれで良いわけですからね。新しいアルバムは、ハードなビートとボーカルのハーモニーがたくさんの内容になりそうです。
いま一番音楽的にインスピレーションを受けているものは? おふたりはまったく違った音楽的趣味を持っているのでしょうか?
ナオミ:私は最近、ヤング・MA、ケンドリック・ラマー、ミズ・ローリン・ヒルに惹かれています。それとレゲトンの音楽。
リサ=カインデ:オーシャンサイズ、ジェイムス・ブレイク、ボン・イヴェール といったアーティストたちの音楽をここしばらく聴いています。でも、音楽と同じくらい写真や本にもインスパイアされます。例えば、このところずっとフランチェスカ・ウッドマンの写真にも影響を受けているし、ジャン=ミシェル・バスキアと彼のミューズの関係を探ったジェニファー・クレメント(Jennifer Clement)著『Widow Basquiat』にもとてもインスパイアされています。
作曲について教えてください。どのようにして曲作りは始まるのですか?
ナオミ:書きたいという衝動は場所や時を選ばず、突然やってきます。感情がメロディを生むこともあるし、ピアノに座って音を探っているときに生まれるときもあります。
新しいアルバムを作るのはどのような作業でしたか?
リサ=カインデ:ツアー中にも曲を作っていたので、スタジオ入りした時にはすでに20曲ほどができあがっていました。それと、スタジオでドラムビートのジャム・セッションをしているうちに出来上がった曲もありました。どんなことも新しい曲を作るきっかけになりうるんですよ。本や映画、リズム、感情、絵、言葉——視覚的な刺激は、作曲のうえで絶対的な感覚。私は絵や映画、ドキュメンタリーに強く影響を受けています。私たちは“想像”世代なんだと思います。
あなたたちは、愛や別れ、思い出など、とても個人的な気持ちを歌にしています。音楽を作るということは、癒しのプロセスになっているのでしょうか?
ナオミ:自分たちが体験すること、自問する内容、目に映ること、感動したことなどについて、ふたりで話し合うんです。何が私たちを癒してくれるかについて話すことはないけれど、クリエイティブ・プロセスについては話し合います。スタジオで曲が完成したとき、そしてそれをステージでプレイして観客とシェアできることほど気持ちの良いことはありません。私たちがいかにラッキーかと感じますね。私たちの人生において、音楽はとても大きな一部分です。小さな頃からね。音楽は、私たちを幸せにしてくれるし、自分たちが恵まれていると実感させてくれるものです。
英語と、西アフリカのヨルバ語、両語で歌っていますね。
リサ・カインデ:英語は、音楽や映画で学んだんです。子供の頃から、実にたくさんの英語曲を聴いてきましたからね。XLと契約した頃は、英語で曲を書いてこそいましたが、英会話は苦手でした。スタジオでプロデューサーとコミュニケーションを図るため、そしてショーに来てくれる人たちとうまくコミュニケーションを図るため、猛勉強したんです。ヨルバに関しては、子供の頃に両親とよくヨルバ聖歌を聴いたものです。15歳のとき夢中になって、バタドラム奏者たちに付いてヨルバ聖歌を学びました。ヨルバ語で歌うというのは、私たちにとって、親や先祖を讃えるということ——先祖から代々受け継がれてきた、深く、美しい芸術を伝承していくということなんです。
子供時代最高の思い出は?
リサ=カインデ:母とナオミと三人で、リビングルームで踊った、あの“儀式”が最高の思い出ですね。子供の頃から、17歳ぐらいになるまではよくあの儀式をやりました。踊りながら笑い転げ、大きな喜びを感じたものです。音楽を聴いた最初の記憶は、父のショーだったと思います。コンサート・ホールにいる私たちの写真がたくさん残っているんです。まだ2歳にもなっていない私たちが写っているんですよ!
ナオミ:母と父と私たちが、みんなでハグしている——家族の深い愛ですね。
あなたたち二人の間にある最大の違いとは?
ナオミ:私たちは完全に正反対ですね。メロディとリズム、水と火、内省と衝動、陰と陽……でも、ひとつだけ共通点があります。それは、音楽なしでは生きていられないということ。音楽が私たちを強く結びつけているんです。
言い合いをしたりは?
リサ=カインデ:もちろん! バカみたいなことでいつも喧嘩していますよ!
パリで育ったわけですが、パリという街にインスパイアされますか?
リサ=カインデ:毎年夏になるとキューバの小さな村に暮らしている祖父母の家を訪れていたんですが、いとこや友達とそこで夏を過ごしながら、パリに育った自分たちを本当にラッキーだと感じました。まず、パリは世界一美しい街のひとつですし、また、パリでは世界中の音楽や映画をいつでも見ることができるからです。
観客を前にステージに立っているときには何を感じますか?
ナオミ:私たち双子姉妹と観客が一体になるエネルギーを感じます。それを感じれば感じるほど、幸せな気持ちになります。すると恐怖心がなくなり、そこで感じるのものが、きっと最も自由というものに近い何かなんだと思います。
ミュージシャンになりたいという若い女の子たちにメッセージを――もしくは、若かった頃の自分たちに何を言ってあげたいですか?
夢を信じること。自分自身に忠実であること。「愛してもらえるかどうかは気にしないで」ということ。それと、腕のいい弁護士をつけなさい、ということ(笑)