ストリートに何か描かずに過ぎる日などない。
3年前にショーディッチで、最初のストリートアートを描いたわ。私は画家だし、グラフィティの経験もなかったから、自分のスタイルには合わないって思ったの。今でも筆を使って絵を描いていて、スプレーを手に取ったことは一度もないわ! ストリートアートに初めて取り組んでからというもの、すっかりその虜よ……。すっごくスリリングで夢中になっちゃう。手早くやらなきゃいけないニューヨークのような街では特にね。
私が描いたこの女の子を見た人が、自分をその子に重ねたり、自分の中に眠るその子に気づいたって知るのは気分がいい。
たぶんこの子が、何かもしくは誰かを思い起こさせるのね。絵を描きはじめて以来、この少女はずっと私とともにある。最初は落書きみたいなものだったけど、なぜとかどうやってとか彼女が誰なのかとかは考えなかった。ただ描いたの。彼女を構成するのは何本かの線だけだけど、仕上がりはすごく強い。彼女は誰にでもなれるけど、特定の誰かではないってところが大好きなの。
ザ・ドアーズ(The Doors)を聴くのは、いつだって刺激的。
私のスタジオが静かだったためしはないわ。マイルス・デイヴィス(Miles Dewey Davis)や60年代のジャズナンバー、それにピアソラ(Astor Piazzolla)まで、いつも後ろで音楽が流れているから。若いころ、ザ・ドアーズの音楽にすごく影響を受けたわ。今でもよく聴くの。イタリアで育った私は、ジム・モリソン(Jim Morrison)と彼の素晴らしい歌詞に魅了されてしまったわ。実際、絵の中でもザ・ドアーズの歌詞をたくさん使っているし。
ロンドンの雰囲気とクリエイティヴな空気感は、私にとってパーフェクトなの。
イタリアの街よりも、パリとかニューヨークとかロンドンみたいな大都市が好き。そういう場所ではチャレンジできるもの。でも、特にロンドンの多様性が大好きよ。決して飽きることがないわ。どこを見ても、刺激的なものや人を描くためのキャンヴァスがあるしね。ピンクのアクリル絵の具の香りがすると、どこにいても自分の作品を思い出すの。誰もがステキだと思う香りってわけじゃないだろうけど、それを嗅ぐととっても落ち着くわ。
同じ女の子を350通りに表現したイタリアのアイコニックなデザイナー、フォルナセッティ(Piero Fornasetti)は、こんなことを言っているわ。「モチーフがいいと思うんなら、何回だって繰り返し使えばいい。それで失うものなんか何もないさ」。
私の作品のいくつかにもこの言葉があてはまることはわかっているけど、他の作品とはまったく毛色の違うものもあるわ。そういうものを繰り返し使うことはできない。苦労した作品は数点しかないけど、それが完成するまでの経緯はどれもユニークなの。「Stay Pure」っていう作品もその1つ。シアン・ブルーという特徴的なメタリックカラーの絵の具を使ったのよ。売り手が他の場所で絶対に売らないから、イタリアのある場所でしか買えない大好きな色なの。