料理本の著者、シェフ、ケータリングビジネスの成功者、そして高級イギリス料理の先駆者など、「食」で私たちの五感を楽しませてくれるマーゴ・ヘンダーソンは、料理の世界の急先鋒。ニュージーランドのメキシカン・バーで働いて資金を集め、イギリスへとやってきたマーゴは、その後、The French House、192、そしてThe Engleなど、90年代ロンドンの「クール」と「美味しい」を象徴するレストランでシェフを務めた。現在は、同じくシェフのファーガス・ヘンダーソン(Fergus Henderson)と結婚しているマーゴ。イーストロンドンに、元は学校の自転車置き場だった建物を改築し、四季折々の素材を使ったイギリス料理を出すRochelle Canteenをオープンして早10年が経つ。
もっとも大切なのは食べ物——フレッシュであること。退屈であってはならない。
厨房は整頓されてなきゃダメ。色々なものが散乱していてはいけないの。キッチンの棚やタッパーは、気付けば色々なものが詰め込まれているでしょう? 思い切って捨てて、いつでもキレイにしておくことが大切よ。
女性が苦悩する「自信」というもの
どの分野でも同じことが言えるんだと思うけれど、料理も毎日の鍛錬がすべて。腕の良いシェフになりたければ、毎日数時間を料理に注ぎ込まなければならない。子供が生まれたときにはプロの料理人としての仕事は一時お休みしたけれど、それでもレストランには毎日足を運んだわ。男性とは本来チーム作りに向いているんだと思う。対する女性は、どうしても「自分でやらなきゃ」と人に頼ったり任せたりということができない傾向にあると思う。チームを作るって良いことよ。すべてを自分でやらなくてもいいの。
ときに、料理の盛り付けこそが料理人として一番難しいこと
頑張りすぎてもうまくいかない。あれよあれよという間に出来上がってしまうとき——あれが起こると最高の気分になる。お皿に料理が美しく盛り付けられているさまを見るのは至福のときよ——ある意味では、それを食べるお客様が気に入ってくれるかどうかよりも、それを作った私が気に入るかどうかのほうが大事だったりもするのよ。もちろんお客様も私も気に入れば最高だけれどね! 美しいものができるときって、できる前から「これは上手くいく」と分かるもの。逆に、どうやってもうまくいかないときには途中で捨ててしまいたくもなるわね。
女性シェフにいつも影響を与えてもらっていた
若い頃、私には尊敬する女性シェフが何人もいた。航空チケットをとってロサンゼルスに飛び、メアリー・スー・ミリケン(Mary Sue Milliken)のレストランにひとりで行ったこともあるくらいよ。夫のファーガスとともにオーストラリアでステファニー・アレキサンダー(Stephanie Alexander)に会ったときは、しどろもどろになったわ。長年憧れの存在だったひとに出会えてしまったときって、人間はあんな風になるものなのね。ステファニーはただただ素晴らしいシェフ。自分にも共通する、とてもささやかだけれど絶対的な意味を持つものを持っているひと——それがロールモデルというものなのかもしれないわね。若い頃は、憧れの女性シェフたちのレシピをよく読んだものよ。「これを完璧に仕上げたい」とか、「このひとになりたい」なんて思いながら読んでいたわけではなく、レシピを読むことで私の道を示してくれたのが彼女たちのレシピだった。男性シェフにも憧れの存在はもちろんいる。でも女性シェフこそ、私がもっとも強く憧れた存在だった。
最初に考えなければならないのは、最終的な出来栄え
先に出来上がりを考えておかなければ、出来上がるものは想像からまったく外れたものになってしまうの。ほかは、考えなくても直感で初めから解っているはずのことがほとんど。フレーバーに関して、私はそれほど考えを巡らせたりしないの。直感で分かるものだから。私は直感を大事に、料理をするの。それが自然なことだと思う。自分で食べるものに関しては、小麦粉を使った料理を少しと、サラダに野菜といった料理が好き。「お肉料理のプレート」の世界観を、現代的に、よりグラマラスに解釈したような内容ね!