香りは感性を刺激する。場の雰囲気を変え、ある特定の場所への道しるべとなり、忘れかけていた記憶を呼び起こすパワーを秘めているのだ。人をメランコリックでノスタルジックな気分にし、その心を喜びで満たすこともできる。香りはどこにでもあるものだが、それを言葉で描写するのは簡単なことではない。香りはどのようにクリエイティヴィティを刺激し、その存在はどのように言葉で語られてきたのか。作詞家、詩人、劇作家、作家、脚本家として活躍する5人の女性に、その作品と香りのかかわりについて聞いた。
コシマ(Cosima):シンガーソングライター。昨年リリースされたデビューミックステープ『South Of Heaven』は、ヒットシングル「Girls Who Get Ready」と「Had To Feel Something」を収録。
「実際、香りは音楽と同じように、特定の感情と結びついて、過去のある瞬間に人を引き戻してしまうのよ」
モリー・デイヴィス(Molly Davies):劇作家、脚本家。彼女による2009年の『A Miracle』と2014年の『God Bless The Child』は、ともに〈ロイヤル・コート・シアター〉で上演された。現在は、ジュード・ロウが主催する〈Riff Raff Films〉のために、デボラ・ケイ・デイヴィスの小説『True Things About Me』をもとにした脚本を制作中。
「私の嗅覚はすごいのよ。実のところ、この感覚くらいしか満足に機能してないんじゃないかって思うわ」
ケイティ・カーン(Katie Khan):作家。小説『Hold Back The Stars』(Doubleday社刊)が発売中。
「登場人物の香りを描写するのは、もっと根本的なことよ。彼らから自然ににおい立つ香りを描写することで、さらに奥底にある性格を暴き出すことができるんだから」
クレア・ポラード(Clare Pollard):詩人。最新の詩集『Incarnation』が、2月23日に〈Bloodaxe Books〉社より刊行予定。
「香りってすごくインティメイトで直接的よね」
アンナ・マクガイア(Anna Maguire):脚本家、映画監督、女優。デイヴ・エガーズによる小説『Your Mother and I』の映画化作品が、最近ロンドン・ショート・ムーヴィー・フェスティバルで最優秀賞を受賞した。
「嗅覚と記憶の関係性で私が一番好きなのは、そういう部分なの。世の中にある、言葉ではっきりと表すことのできないもののひとつね。ひとたびこれが機能すると、音楽くらいしか対抗できないほどのパワーが発揮されるわ」