リトル・ブーツが提案するプレイリスト

イギリス・ブラックプール出身のシンガーソングライター、リトル・ブーツが、世界のどこで聴こうと素敵な国際女性デーにベストマッチなトラックを選んでくれた。

このミックスはディスコを基調としているけれど、さまざまなタイプの女性アーティストをフィーチャーしてひとつのパワフルな音世界を作り出そうと思ったの。グレイス・ジョーンズといった伝説的アーティストから、無名のアーティストまで——無名とはいっても、これまで有名アーティストに曲提供やボーカル参加をしてきたような、優れたアーティストばかり。たとえば、シリータ(Syreeta)や、DJ兼プロデューサーのザ・ブラック・マドンナ(The Black Madonna)といったアーティストたち——ディスコの時代にインスピレーションを得て、今日の音楽に素晴らしい作品を残そうと尽くしている素晴らしいアーティストたちよ。それと、ヴァニティ6は、力強く本能を受け入れて生きる世界中の女性のために、入れずにいられなかったわ!

1

グウェン・ガスリー「Peanut Butter: Larry Levan Remix(ロング・ボーカル・バージョン)」

1980年代、マンハッタンのダウンタウンはソーホー西側のハドソン・スクエアにあった伝説的なディスコ、パラダイス・ガレージで、“パラダイス・ガレージのファースト・レディ”と呼ばれていたグウェン・ガスリー。シスター・スレッジやロバータ・フラックに曲提供をしていたソングライターであり、アレサ・フランクリンからマドンナまで伝説的シンガーたちのバックグラウンド・ボーカルを務めた素晴らしいシンガーでもあった。彼女自身も「Ain’t Nothing Goin’ On But The Rent」でヒットを飛ばしたことがある。この歌は、「No romance without finance(お金がなければロマンスもなし)」というアイコニックな歌詞で、強い女性を表現して大きな人気を博したの。1980年代にレゲエをベースとしたポップ・ロックの原点を作った、スライ&ロビー率いるコンパス・ポイント・オール・スターズと、パラダイス・ガレージのレジデントDJだったラリー・レヴァンは、彼女と多くのコラボレーション作品を生み出した。この「Peanut Butter」はそのひとつよ。

2

グレイス・ジョーンズ「Pull Up To The Bumper(Joey Negro Bumper To Bumper Mix)」

女王グレイスのサウンドなしに国際女性デーのミックスなんて作れない。歌詞にセックスを示唆する表現が多すぎて、アメリカのラジオ局では軒並み放送禁止となったそうだけれど、グレイス曰く、「性的な意味など込めていない」とのこと。そんなわけないわよね。

3

ニュー・パラダイス「I Love Video(Gilbert Cohen & Vidal Benjamin Edit)」

この曲について詳しくは知らないんだけれど、YouTubeで好きな曲を聴いた後に自動再生で次に流れた動画がこの曲だったの。頭から離れなくなった。このバージョンは数年前にレーベルVersatile Recordsから発売された1980年代フレンチ・シンセ・ポップのコンピレーション『Disco Sympathie』からのもの。このボーカルが好きでたまらない。

4

セルローヌ(Cerrone)「Hooked On You(Kon Remix)」

これもフランスからで、ドラマーのセルローヌが手掛けたトラック。ボーカルにはジョセリン・ブラウン(Joselyn Brown)を迎えて、コン(Kon)がエディットを手掛けたもの。ジョセリンは、往年の傑作ディスコ・ソングのほとんどでボーカル参加している伝説的シンガーよ。

5

ナイト・アクション(Knight Action)「Single Girl(Vocal Mix)」

最近になって久しぶりに聴いて、それからというもの私のテーマソングとなっている曲。オランダのアンダーグラウンド系レコードショップCloneが、過去のレコードを再リリースするために立ち上げたアナログ専門レーベルClone Classic Cuts——そこからリリースされたものをわたしは聴いたんだけれど、もともとは1984年、ハウス・ミュージックの黎明期にシカゴのクラブ・シーンでヒットした曲。イントロ部分の会話部分が秀逸。

6

シリータ「Can’t Shake Your(Larry Levan Mix)」

巨匠ラリー・レヴァンが手掛けたトラックで、昨年リリースされたコンピレーションの『Genius of Time』からのもの。シリータは、短い間だったけれどスティーヴィー・ワンダーと結婚していた時期があって、別れた後もソングライターとしてコラボレーション関係を続けたの。「Signed, Sealed, Delivered」や「If You Really Love Me」をプロデュースしたのもシリータなのよ。

7

ヴァニティ6「Nasty(Bill & Ted edit)」

プリンスのプロデュースによるガール・グループ、ヴァニティ6(グループ名にある「6」は、メンバー全員の胸の数だそう)は、1982年、素晴らしいタイトルのファースト・シングル「He’s So Dull(「つまらない男」の意)」をリリースした直後に、これまた素晴らしいタイトルの「Nasty(「いやらしい」の意)」でヒットを飛ばしたのよ。

8

ザ・ブラック・マドンナ「Stay」

「売り出しにくい」と言われ続けたにもかかわらず、今や時の人となっているDJ、ザ・ブラック・マドンナ。もとはパンクだった彼女が、今やクィアDJとして、Mixmagでは「年間最優秀DJ」にまで選ばれている。素晴らしいプロデューサーでもある彼女は、「Stay」で、カジュアルT(Casual T)の「Hands Off」からアフィニティ(Affinity)の「Don’t Go Away」まで、幅広い音楽からの音源をサンプリングしているんだけれど、すべてが彼女のサウンドになってしまうのは、さすが。

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