コラージュやイラスト、ペインティングなど様々な手法で、一度観たら脳裏に焼き付く、“不気味さ”と“愛らしさ”が奇妙に混じり合う作品を発表するアーティスト、とんだ林蘭。先日、気鋭作家たちが展示を行うアートギャラリー「VOILLD」で行われた個展も記憶に新しく、アーティストとして注目度もますます高まっている。東京を拠点に、現代に生きるリアルな女性として表現を続ける彼女は、アートを軸に、ファッションや音楽など、さまざまなフィールドを行き来し、幅広い表現活動を行っている。今の時代に流れる空気を敏感に感じ取り、作品へと昇華する彼女の魅力とは一体なんだろうか?
グロテスクな生肉や、どこか怖さを感じる金髪女性の肖像、砂漠でTVに映る「見世物小屋」のサインなど、さまざまなモチーフたちが彼女の手によって切り貼りされ、鮮やかなカラーの上で新たな世界を作り出す。私たちが無意識に日常の中で触れている身近な素材を使い、観る者の固定概念を揺さぶる中毒性の高いビジュアルからは、彼女独自のフェミニンな美学と欲望が立ち込め、気が付けばその猟奇的な世界に迷い込んでしまっている。
アーティスト自身を写し出した内的世界では、ハンバーガーにストローを刺し、ポテトを頭に被り、パイの上でテレパシーを使う。「靴とバッグと青いドレス、あとはリップスティックが欲しいわ」と脈略も無く語りかけてくるのは、覆面の女と並んだ無表情な少女。その奇妙さに私たちの想像力は掻き立てられ、自分の中に潜んでいる隠れた願望に気付かされるのだ。
とんだ林蘭/1987年生まれ、東京を拠点に活動。コラージュ、イラスト、ぺインティング、立体、映像など、幅広い手法を用いて作品を制作する。猟奇的でいて可愛らしく、刺激的な表現を得意とし、名付け親である池田貴史(レキシ)をはじめ、幅広い世代の様々な分野から支持を得ている。木村カエラ、東京スカパラ ダイスオーケストラなどの音楽アーティストや、MIHARAYASUHIROなどのファッションブランドへも作品提供を行うなど、精力的に活動の場を広げている。