北極の氷が溶けていく様子を記録することで、地球温暖化を白日のもとにさらした映画『Chasing Ice』。世界中の映画祭で賞を獲得したこのドキュメンタリー映画を観て以来、エリザベス・ファレルは行動を起こさずにはいられなくなった。リサイクルしたケープに身を包み、地球を救う正義のヒロイン、グレイシャー・ガールが誕生したのは、そういうわけだったのだ。わかりやすく身近な表現を使って、彼女は私たちのような人間にアピールする。インスタやタンブラーに、カスタマイズした服やアクセサリーや写真をアップしたのだ。きょうび、彼女と同年代の少女たちは、目に見えるものを信じる傾向にある。融解する氷河や上昇する海面は、今まさに人類が失いつつあるものを暗示するイメージなのだ。そして、エリザベスがつくり出す、あからさまではあるが美しいイメージは、ごく身近な媒体を使うことで広まっていった。その作品と個性ーー清らかな肌とオーシャンブルーに染められた髪は、先輩の環境保全活動家スワンピー氏[訳注:イギリスの環境活動家]のそれとはかけ離れているーーは、どちらもエコに敏感なファッション業界の目にとまることとなる。〈ヴィヴィアン・ウェストウッド〉のモデルやコラボレーションから、「School of Doodle」主催のトークショーでのキャサリン・ハムネットとの対談まで。グレイシャー・ガールは、今や押しも押されぬ存在となったのだ。今回、そんな彼女が現状を打破する方法を私たちに伝授してくれた。
自分の力を一個人と考え、行使せよ
カナダのジャーナリスト、ナオミ・キャンベルからは大きな影響を受けたわ。消費と気候変動についてネット検索したとき、何も見つけられなかった。でも作り話なんかじゃないこともわかってたの。そんなときキャンベルの『This Changes Everything: Capitalism vs. The Climate』を読んで、私が言おうとしていたことのすべてが、びっくりするほどはっきりと書いてあるのを見つけたわ。消費と気候変動が重要なことだっていうのは知ってたけど、同世代の人たちは知識が乏しいと感じていたし、それがストレスだったの。もっと当たり前のことになってほしかったし、関心がある人たちに、もっと実生活でその考えを応用してもらいたかった。誰もが現状を変える力を持っているんだから。
声は最も便利な道具である
コミュニケーションがなにより大事。一番効果がある活動は、気候変動について話し、たくさんそれに関する会話を生み出すことよ。リサイクルしたり、こまめに電気を消したりする、小さな活動ももちろん素晴らしいことだけど、そのことについて話せば、一番いい注意喚起になるの。地球規模で物事を考え、行動を起こし、共感する。環境上の正義を遂行するために活動することは、同時に社会正義のためにもなるのよ。環境をケアするのは、よりよいライフスタイルを築くためなんだから。自分ができることやできないことに関する知識を増やし、その上でその知識について可能な方法で語り、他者と対話するの。
誰でもDIYできる
ほとんどの場合、私の作品は技術のいらないDIYよ。ものすごい才能なんて必要ない。どう表現するかだけが問題なの。私はネット上で自分のアートをシェアするけど、それはたくさんの人に見てもらえるから。私は、言葉だけより、イメージがあったほうが自分の言いたいことを伝えられると思う。言葉の壁もなくなるし、自分なりの解釈を込めることができるから。もし誰かが違う解釈をしたとしても、そのイメージには潜在的に他者に訴える力があるということになるわ。今の時代、いろんな考えに触れ、それに引き込まれるのは本当にたやすいことなんだから。
期待せずにやる
何でもそうだけど、重要なメッセージを投げかけるとき、期待はしちゃダメ。期待しなければ、常にハッピーでいられるから。すごい活動をしている若い人がいっぱいいて、私もとっても励みになる。でも、自分のしていることに対してポジティヴな反応は期待していないの。結果的に私の人生を変えちゃったのは、うれしい驚きだったけどね。私はただ、自分が大好きなことをやっているだけだから。
立ち止まり、考えよ
学校では、社会的なこととしてではなく、化学の授業で気候変動を習うでしょ。私がそのことについてちゃんと気づいたのは17歳のときで、とっても遅かったと思ったわ。誰も教えてくれなかったことについて、怒りを覚えたくらい。もっと早い段階で、ちゃんと教育システムの中に組み込まれているべきだわ。自分の生活が地球全体にどんな影響を与えているのか、みんな一度立ち止まってその現実に目を向け、考える必要があるのよ。