ランカシャー出身の作家、女優、モデルであるイエルサ・デイリー=ウォード は、小さなころから自身の想いを言葉で表現することに情熱を捧げてきた。それが再燃したのは、若者によくあるモラトリアム期間中。都会生活に退屈し、息苦しさを感じた彼女は、わずか200ポンドをポケットにねじ込み、新たな冒険を求めて南アフリカに旅立ったのだ。そして、この思い切った試みは、それまで世に出ることのなかった彼女の才能をひらめかせ、その心に再び居場所をつくり出すという素晴らしい結果を生んだのだった。ある夜、イベントに参加したイエルサはスポークン・ワードでの詩作に出会い、それから3年経った現在では、飾らない正直な文体が共感を呼ぶ、ニューウェーヴな現代詩人のひとりとなったのである。
LAとロンドンの2都市に拠点を置きながら、現在もイエルサは自身の中に潜む想いや感情を、文章というかたちで吐き出している。シェアすることは、彼女にとって生きる術なのだ。彼女の詩集『Bone』を読むと、そこに書かれていることが真実だとわかるだろう。ジャマイカとナイジェリアというイエルサのルーツ、フェミニニティ(女らしさ)、セクシュアリティ、そしてメンタルヘルス。内的そして外的な葛藤に直面しているひとりの女性によるこの詩編は、痛烈なまでの率直さ(危険。危険。心地よい悪癖)、あるいは抑揚の利いた楽観主義(そのかわいらしさを逃がさないで。ずっとあなたのものだったのだから)に満ちあふれている。
"愛する人の思い出。香りはずっとつきまとい、残るもの。長いあいだ消えないもの。"
Scent 香り
理論上は、
あなたを記憶から追いやってしまったのに。
いまだ、目と鼻の先で
そう告げられるのを拒んでいる。
まだ終わってない。たぶん頭の中のこの空気のせい。
3年。2人の関係のために、私はがんばりすぎた。
3年、
それでもまだ、私はあなたの香りから解き放たれていない。
それは恐ろしくも複雑な事実。
私の五感への奇襲。パン屋、ファストフード店、
露天の花屋、ショッピングセンター、
革製品の店へ
毎朝、いまだにランカシャーはあなたの香りがする。
先週、海外で嵐に襲われた。
その雨の香りでどうかしてしまった私は
あなたの瞳しか見えなくなってしまった。
今は家で、コンロに火をつける。最近は新しいメニューに挑戦してる
料理本を見て。今はあなたがいないから、肉を料理することもできる。
あなたが嫌いと知った香水を買って
ベットへあなたが寝ていた方にそれを振りまくの。
いまだに、
あなたは押し寄せる波のように、私の前へ不意に現れる。
きのうの夜、夢であなたの香りがした。
もう指紋のようなかすかな跡でしかないけれど
あの喪失感を忘れることはできない。
夢の中の美しいあなた。
あなたは
ぜんぜん美しくないのに。それでも
3年
なのに私の皮膚からあなたを洗い流すことができない。