ラジオDJ、クラブDJ、TV番組MCとして活躍し、熱狂的なビヨンセのファンでもあるクララ・アンフォ。まだ10代の頃に〈ニコロデオン〉と〈CBBC〉でそのキャリアをスタートさせ、その後、ラジオ界にもデビューし、〈KISS FM〉のDJだった時期にソニー・ラジオ・アワードにノミネートされた。人気となって〈BBC Radio 1Xtra〉へ移ったのち、2015年には同局の〈Radio 1〉へ。現在はそのチャンネルで、学生やフリーランスの朝イチ番組とも言われる、午前半ばの番組を担当している。
笑っちゃうほど忙しいアンフォを捕まえるために、私たちはラジオの番組と〈ブリット・アワード〉のリハーサル(レッドカーペットとバックステージのリポーターをアンフォが担当している)の合間にセッティングされたランチタイムに押しかけた。ガーナの珍味、ビヨンセの香り、そして不心得者を吊るし上げたことについておしゃべりをするために。
どんな香りに故郷を感じますか?
シナモンね。母と今は亡き父は、いつだってシナモンスティックを家に置いていたの。あとヴァニラのスティックも。
子供の頃を思い出す香りはありますか?
もちろん、西アフリカの食べ物。私の両親はガーナ出身だもの。コショウとスパイスと、あとジョロフ・ライスっていう料理。すごく有名な西アフリカの料理よ。ガーナ人が発明したの。はっきりそう書いていいわよ。その香りでいつも子供の頃のことや、母がそれを料理しているところ、すごくおいしかったことを思い出すの。
いろんな魅力的な土地に旅していますよね。ある香りを嗅ぐと思い出す国はありますか?
何か甘い香りを嗅ぐとニューヨークを思い出すの。わかるでしょ? 甘いものにちょっとつぶつぶが混ざったフレッシュなチーズケーキ。
香りを1つビンに詰められるとしたら、何の香りにしますか?
ヴァニラかホワイトムスクのどちらかね。その香りを嗅ぐと、10代の頃を思い出すから。“初めての香水”みたいなね。無害で、でもあたたかい香りよ。
音楽と香り。どちらがより感情に訴えかけ、ノスタルジアを呼び起こす力を持っていますか?
もちろん音楽。このときはこの曲ってピンポイントに言えるくらい。曲のリフか何かを聴けば、それを聴いたとき、いつどこにいたか思い出せるわよ。成長の過程で、私はスポンジみたいにいろんな種類の音楽を聴くようになったの。両親がケーブルテレビに入ってたっていうのは、私にとって合法的な中ではいちばん素晴らしい出来事だったわ。4人のきょうだいと一緒に暮らしていたから、みんな音楽の趣味もバラバラ。それぞれのきょうだいを、それぞれ違ったかたちで思い出させてくれるバンドやミュージシャンがいるわ。
自分の香水をつくるとしたら、どんな名前にしますか?
全然オシャレじゃない私のあだ名。アンフォ・リアルっていうの。前に友達から冗談でこう呼ばれていたのよ。考えても見てよ、「あんたマジ(real=リアル)? アンフォ・リアル」なんて言われるのよ。
今まであった有名人の中で、いちばん良い香りがしたのは誰ですか?
ファレル・ウィリアムズは、すごくピリッとしてフレッシュな香りがしたわ。なにもつけていなかったとかじゃなくて、さわやかな優等生みたいな香りだったの。
ビヨンセはどういう香りだと思いますか?
揚げたての温かいベニエね。南部の良い部分みたいな。お金持ちのクレオール人とか、ディープサウスの良い部分とか。
最近アデルも言っていましたが、ビヨンセはこの世で最も影響力のある人物の1人です。ほかにあなたが大人になる過程で影響を受けた人はいますか?
お気に入りの人はたくさんいるわよ。ブランディ、ジャネット、ホイットニー、ケイト・ブッシュ、ロウジン・マーフィー、ローリン・ヒル。女性アーティストがすごく好きなの。彼女たちはなくてはならない存在だったわ。
尊敬する女性MCは誰ですか?
(TV番組MCの)ヴァネッサ・フェルツ(Vanessa Feltz)は本当に賢い人よ。大好きなの。ものすごく博識で、その語彙力といったらこの世のものとは思えない。それに誰に何と思われようと気にも留めないの。〈KISS〉が開局したばかりでちょっとアンダーグラウンドっぽかった頃、兄がよく聴いていたんだけど、当時しゃべってたウェンディ・ダグラス(Wendy Douglas)という女性は、最高にすてきな声だったわ。そしてもちろんアニー・マック(Annie Mac)。今じゃ同じ局の仲間よ。そしてアニー・ナイチンゲール(Annie Nightingale)。ものすごく長いキャリアを持っているわ。ちょっとクサく聞こえるかもしれないけど、私が仲間と呼べるようになったこうした人たちから、それぞれ違うかたちで影響を受けているのよ。
若い頃、新しい音楽を友達と共有したり、新しいミュージシャンについて教えることを楽しんでいましたか?
友達グループの中で、まさにそれが私の役目だったわ。学校の自由時間にCDを持ってくるのは私の役割だったの。『The Miseducation of Lauryn Hill』を持って行ったときのことを覚えているわ。「いい、みなさん。よく聴いてね」みたいなね。アルバムにどっぷり浸かるの。今でもそんなことをするのが好きよ。この仕事をやってる理由は、新しい音楽をシェアするワクワク感なんだもの。
ストリーミングの時代がやってきて、ラジオDJの役割は変わったと思いますか?
変化したと思うわ。考えが甘いのかもしれないけど、私はラジオやTVやそのほか音楽を扱うすべてのものは、ストリーミングに虎視眈々と狙われているなんて感じていないと思う。ラジオでやっていることにそれを取り込むことはするけど。それでも声を必要とする人や、MC、DJ、ジャーナリストの会話を期待する人はまだいるの。それから、誰もが自分と同じように音楽にアクセスするなんて思い込んじゃダメ。アクセス方法が同じだったとしても、まったく違うやり方だったりするときもあるし。音楽を自分で探すより、人にこれがいいよって勧められるほうがいい人だっているわ。それもいいじゃない。そうしなきゃ私、仕事を続けられないわ。
〈Plan〉と一緒に、ガーナのような国の女の子たちに無償の教育を提供するためのプロモーション活動をしていましたね。社会にお返しをすることはなぜそれほど大切なのでしょうか。
他の人のためになると少しも思わないのなら、対外的な仕事をする意味はないわ。私、最近、インスタグラム上で、あるブレードヘアの会社を文化の盗用じゃないのかって非難したのよ。そこのアカウントにある写真には1人も私みたいな女性が写っていなかったから、私の髪でちゃんとやれるのか言ってみなさいよって。そしたら、私みたいな女性を使うようになったわ。私ってそういうところが問題なのよね。残念なことに、今はわざと見ないふりをしなきゃいけない時代だと思う。いつでも何でも自分が本当に思っていることを余さず言えるなら、Twitterだってちょくちょくやるだろうけど、私って抜け目なくケンカをふっかけちゃうタイプだから。