グレタ・ベッラマチーナが詩に描く世界

「言葉が持つ力、言葉が現実を飲み込み、歪めるさまに興味がある」と語るグレタ・ベッラマチーナは、21世紀の詩のあり方、そして映像のあり方を根底から変える、革新的な詩人、小説家、そして映像作家だ。

ロンドンを拠点に活動を展開する詩人、小説家、映像作家、そして教育関連アクティビストであるグレタ・ベッラマチーナ(Greta Bellamacina)は、2011年に処女作となる詩集『Kaleidoscope』を発表して以来、そのスタイリッシュにして優雅な世界観で、独創的な詩と映像の作品を世に送り出してきた。数々のオムニバス詩集で編集や著者を務めた後、2014年にはYoung Poet Laureate of Londonに選出され、そしてロサンゼルスのChateau Marmontではレンジデンス・アーティストとしてライターを務めた。教育関連のアクティビストでもあるグレタは、その活動の一環としてドキュメンタリー映像作品『The Safe House: A Decline of Ideas』も発表している。今年リリースされ、初めて自身で脚本と監督を手掛けたこの作品は、図書館の歴史と未来を探るという内容。図書館が国内で激減している現実を受けて、英国(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)内では最古と言われるスコットランドはリードヒルズの公立図書館から図書館の歴史を辿りながら、「すべてのカルチャーを、均一の尊厳と敬意をもって扱う聖域」としての図書館がない未来を想像し、危惧する作品となっている。

現代の詩人たちが詩人として生活を営んでいけない現状を憂いたグレタは、恋愛関係にある詩人ロバート・モンゴメリー(Robert Montgomery)とともに、出版社New River Press社を立ち上げた。これまでに数人の詩人の作品を出版しているNew River Pressの次作は、女性という存在の尊厳を謳う詩集『Smear』となる予定。「母親が娘にプレゼントできるような本を作りたかったのです。郊外に育つ女の子なら誰でも共感できるような詩を一冊にまとめたかった。先入観などなく、どんな特権やイメージにも左右されない、ただ真実だけが謳われている、成長の詩を集めた一冊を」とグレタは語る。グレタ自身の最新詩集『Perishing Tame』は、女性であるということ、母親であるということ、そして母親として経験する様々な変化をテーマとして、グレタが「女性とは」を見つめ、謳った作品を収めている。作品でも実生活でもシュルレアリスムの影響を強く受けているグレタ。詩というアートの未来は「ストリートと夢の中にこそある。詩は、覚醒した状態が夢を見ている状態との境界線をなくすまで日常のリズムに組み込まれるべきもの。私たちがいま生きている世界は、理路整然とお膳立てされすぎている。人間はもっと自分自身の感情に忠実に生きるべき。私たちは多くを失う危険に直面している」と言う。

Black Under Heaven

小さなカップやハサミが揺れ

誰もが恐れおののいて

天国ではユリの花がテーブルに

空を形成するのは 私たちの子ども 戸口に眠る

青い服が投げられた寝室の床は 海のよう

あなたの香りは 黒く天国の影のよう

怒りに満ちて でも柔らかく

夏の足跡を消し去る

そこに思い描くチャペルには

いつでも明かりが優しく灯り

光の中で 私は肥大していく

温かい灰が

私を焼き

リアリティTVさながらの政府を浄化する

私は宙をさまよい

ベッドに天井が落ちても 気づかない

私たちを追いかけ

狂乱のときを作り出した

天王星の星々を 消し去る

木々に関するニュースは嘘になる

私たちはひとつの部屋に暮らしているの

BTタワーは私たちの灯台

私たちはともに母親になった

私たちは抽出され 香りになる

永遠の朝

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