写真家でありミュージシャンでもあるイレーネ・ドレーゼル(Irène Drésel)。彼女が作る音楽は、エレクトロニカの音と官能的なテクノの音の間に位置する音世界であり、彼女が作り上げる写真は、その独自の音世界が表現された視覚的世界となっている。数年前、イレーネはパリの国立高等美術学校を卒業した。そのとき、彼女は、パリという街が放つロマンスの要素をあとに残し、田舎町へと引っ越した。その理由を、彼女は、「心もメロディも、豊かな自然の中でこそ自由に解き放たれるから」と語る。デビュー・アルバムのリリースを控えたイレーネ。彼女のうちなる世界に響く5つの刺激について教えてくれた。
私の作品は直感によって生み出されている
音楽づくりに関しては、ただ目を閉じてメロディが私を通して浮かび上がってくるのを待つ。写真では、私が日常で気づく自然の矛盾を捉えたいと考えている。
私が作った曲「Lutka」——この曲には、花や木々の香りの記憶が織り込まれている
ビデオではアニメーションを用いて、ユリやバラが花を咲かせるさまを描いた。デヴィッド・リンチが考案したスペースSilencioで舞台を上演したとき、フラワースタイリスト、エイミー・ハンフリー(Amy Humphrey)とコラボレーションし、演出でステージを生花で埋め尽くした。「Lutka」のインスピレーションは、花が持つ官能性と女性らしさの力——花が放つそんな力を、観客にも感じてもらいたいと思っての演出だった。
私の音楽は自然から生まれる——そして私は自然から力を得る
作曲の途中で、自分の耳が自分のものではないように感じるときがある。痺れたように耳が感動を誘発することができなくなると、私はベランダに出る。太陽の光を燦々と浴びて、心が安らぐ——ベランダは、そんなシェルターのような場所。私にとって、自然とは、尽きることなくインスピレーションをもたらしてくれる存在。自然の息吹のなかに生きていると言っても過言ではない。
聴くひとが、温かく抱きしめられているような感覚を得てくれるような音楽——そんな音世界を作りたい
音楽は、気持ちという無形のものを共有できる、不思議にして素晴らしいもの。落ち着いた気持ちから怒りの感情まで、さまざまな心の状態を共有することができ、だからこそ、聴けば孤独感が和らいだりする——できもしないのにベリーダンスが踊りたくなってしまったり(笑)
誰かと晩餐をともにできるとしたら、マリア・カラス(Maria Callas)と
20世紀に出現したオペラ歌手の中で、今にいたるまでもっとも尊敬を集めているマリア・カラス。影響を受けたアーティストは数知れず——あの音域はとにかくすごい。カラスがプッチーニの「O Mio Babbino Caro」をアカペラで歌うのを生で聴いてみたかった。きっと息もできないほどに感動するはず。