芸術家とアイドルの境を越えるマコ・プリンシパルの魔法

芸術家とアイドル、二つの表現者としての顔を持つマコ・プリンシパル。絵画やインスタレーションなど様々な表現方法で作品を発表し続ける彼女のクリエーションに欠かせない要素は、彼女独特のものだった。

ナマコプリ(namakopuri)SUSHI PARTY ft. Masayoshi Iimori


1

変身

私には“変身”する瞬間があるんです。マコ・プリンシパルとしてアーティストになり、音楽活動のユニットでは「ナマコプリ」としてアイドルになります。私の中では、どちらも大切な“表現者”としての姿形だと思っています。「アーティストとしての表現」と「アイドルとしての表現」は、どちらも自分の思いを届けるための大切な瞬間です。美術の表現と変わらないイメージで、アイドルとして、「作品の一部になる」という感覚をもっています。絵の世界は、自分の脳内に広がる世界を切り取って、その一部を映し出したものです。

2

魔法

アニメが大好きで、小さい頃からずっと観ていました。特に、『魔法の天使クリィミーマミ』が大のお気に入り。前述したナマコプリの原点であり、アーティストとしての絵の世界観、思い描いたアイドル像としても、強い影響を受けたアニメです。二匹の猫の姿を借りた使い魔のキャラクターや、心の美しさから魔法を与えられる主人公にずっと憧れていました。物心ついた頃から魔法少女になりたいと願い続け、結局この世界に魔法は無かったけれど……。アーティストとして、アイドルとして、誰かのハートをキラキラさせることができれば、それ自体が魔法になると気がついたのです。いまでも、そしてきっとこれから先も、夢や希望を与える存在でありたいという思いは消えないと思います。

恋するフォーチュンクッキー ギャルニカ!ver.

3

女の子

芸大の先輩で美術作家である松田修さんに、「マコちゃんがつくっている世界は、正に“ネオレズビアン”だね」と言われた事があります。私の作品には、“少女性”としての女性をモチーフにした作品が多いんです。この感覚は、自分の中である種の理想郷として存在しています。女性アーティストのみでイベントもよくやっていて、男性意識の「モテ」願望は特にないのですが、「老若男女生きとし生けるもの全てに届けっ!」と、常に思っています。男性が存在しない世界は、独特な異常性がありそこでしか生まれないが面白さがある、そう感じています。ちなみに、ネオレズビアンはその友人がつくった造語です。

4

ヒーロー

おじいちゃんがヒーローアニメの作曲家だったこともあり、幼い頃から「マジンガーZ」などのアニメに触れて育ちました。あとは、「スーパーマン」「バットマン」等アメコミの影響もありますね。「セーラームーン」も考え方として、ものすごく憧れました。色んなヒーローとおじいちゃん(おじいちゃんもヒーローだけど)のおかげで、小さい頃から正義感が強かったんです。愛とアートと音楽で世界を救う、それが今も変わらない私の夢ですね。Chim↑Pomのエリイちゃんに「ジャンヌ・ダルクになったらいいよ」と言われたことがあって、それを体現したいです。

5

自由

常識とか、何かに捉われると、窒息しそうになり、なにもつくれなくなります。いつも感覚的に自由に生きていきたいです。常に自由につき進み“マコプリ”がキラキラし続けている事が、見えない誰かの希望になるかも……そう信じています。ジャンヌ・ダルクであり、自由の女神でもありたい!アーティストやアイドルとして、表現活動を行っているときの自分の姿こそが、自由の象徴なんです。

マコ・プリンシパル/東京芸術大学油画専攻卒業・同大学院版画専攻卒業。脳内世界を切り取り、絵画、写真、インスタレーションなど様々な作品を発表している。2013年から芸術家アイドルユニット『ナマコプリ』として音楽活動も開始。2016年8月にはナマコプリ初のCDアルバム「アートの神様」をリリース。世知辛い世の中、ジャンルにとらわれないガーリーで煌めく“マコプリワールド”を表現する。

Instagram:@makopuri

oiranmusic.com/namakopuri

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