18歳のシンガーソングライター、ザラ・ラーション(Zara Larsson)は、スウェーデン生まれ。特に音楽好きの一家に生まれたわけでもないのに、物心ついたころから歌手になりたかったのだと言う。そんなわけで、私たちの多くがまだ泳ぎ方を習うような時分に、彼女はポップス界という巨大な宇宙に飛び込むことを選んだ。若干10歳にして、スウェーデンのタレントオーディション番組「Talang」を勝ち抜いた彼女は、その後リリースした3枚のEPで破格の売り上げ枚数を記録。16歳でアルバムデビューを果たした。『タイムズ』誌が選ぶ2016年に最も影響力のあったティーンの1人に選ばれるであろうことは想像に難くないが、彼女としては自分の力を良い方向、つまり、ネガティヴ要素を取り除き、フェミニストとしての立場を強調することに使いたいと思っている。モットーは「ブロックと削除」、そして「いいじゃない」。夢を真摯に追い続けながら、物事を深く取り過ぎないことを私たちに思い出させてくれる彼女は、今まさに世界が求める才能なのだ。
"ビヨンセのライブでのオープニングアクトは、心が震えるほどすてきだった"
ザラ、あなたが音楽にのめり込んだのはいつごろからですか?
音楽はずっと大好きで、物心がついたころからずっと歌手になりたいと思っていたの。ほかの職業に就きたいと思ったことは、覚えている限りないわ。人生を通してずっと歌っていたのよ。でも別にうちの家族は音楽をしていたわけじゃないから、ちょっとおかしいんだけど。どこから来たのかわからないこの情熱を、私はずっと持ち続けているのよ。
初めて心を動かされたミュージシャンは誰ですか?
セリーヌ・ディオン(Céline Dion)とホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston)ね。まだみんなCDを買っていた時代のことだけど、ママがホイットニー・ヒューストンの2枚組のベスト盤を買ってきたの。人があんなふうに歌うのを聴いたのは初めてのことだったわ。ママがストックホルムにいたころ、一緒にセリーヌ・ディオンのコンサートにも行ったんだけど、とてもすてきだった。そのあと、私の人生を変えたビヨンセと出会ったのよ。彼女はホイットニーやセリーヌのような素晴らしい声だけじゃなくて、ほかにも何か持っている人だった。彼女の歌は何かが違うの。歌手でありながらダンサーでもあり、そのすべてをライブに注ぎ込んでる。それを見て、ただショックを受けたわ。それからというもの、ビヨンセはずっと最高のアイコンよ。私のすべてを変えてしまったの。
ウェンブリーでビヨンセ(Beyoncé)をサポートしたときはどうでしたか?
夢のようだったわ。どっちの公演でも泣いちゃって、ホントにシュールだった。今まで経験したことのないような大勢のお客さんの前で歌ったからってだけじゃなくて、それが彼女のステージだったってことに泣けちゃって。心が震えるほどすてきなライブだった。通路やロビーをビヨンセが通るたび、隠れたりしちゃったの。なんだか会うのが怖くて。だって太陽をまともに見るようなものだもの。遠くからは陽の光を楽しめるし、暖かくて気持ちよくて大好きなんだけど、直視はできないでしょ。目がくらんでしまうもの。そんなふうに感じたのよ。
"今は、どんなふうに変わるかなんてわからないわ"
自分の曲を言葉で言い表すとすれば、どのような感じでしょうか。
私の曲はどれもみんな違うと思う。『Lush Life』も、ニューシングルの『Ain’t My Fault』も、『Never Forget You』も、私のほかのバラードとぜんぜん違うわ。いい感じのミックス感だけど、私が大好きなポップというジャンルに当てはまっているわ。キャッチーなメロディという部分で、結びつけられるのよ。
あなたはずいぶん早いうちからポップスターになりましたよね。まだ18歳なのに、10歳のころから歌い続けている。これまで、あなたの人生の原動力になってきたのは何だと思いますか?
正直なところ、そんなに大層なことじゃないのよ。私はずっと変わらないし、たぶんこれからも同じ。ずっと同じでい続けているなら、大変なことなんて何もないでしょう? いい人でいるのもそんなに大変なことじゃないわ。ミュージシャンに会って「あんなに性格がいいなんて信じられない」って言う人がいるけど、そうじゃない理由なんてないわ。私の周りにいるのは、尊敬できる人、家族、長い間付き合ってる友だち。自分の仕事が大好きだし、好きなことをやってる。楽しいわよ。大成功したというだけで、私の人格が変わるなんて想像もつかないわ。まあ、今はこんなこと言っていても、10年後に会ったときは「あ~ら、ごめんあそばせ」なんて言ってるかもしれないけど(笑)。でも今は、どんなふうに変わるかなんてわからないわ。
フェミニストと公言しているあなたから見て、この運動で最も大事な部分とは何でしょうか。
すべての性が平等な扱いを受けること。社会構造に反して、女の子がマスキュリンになることも、男の子がフェミニンになることもよしとするの。女性ってすごく複雑でしょ。プライベートでも社会においても、女性も男性もマスキュリンさとフェミニンさを両方持ち合わせていると強く感じるわ。男性だって感受性豊かだし、女性も強さを持ってる。この前、この写真をインスタに上げたの。ジェンダーの多様性についてのものよ。男の子も泣いていい、女の子がポルノを見たっていい、男の子も繊細でいい、女の子だって怒りを燃やしていい、男の子が男の子を好きでも、女の子が女の子を好きでもいい。実際、それぞれの性に求められているものって、この逆なんだけどね。結局のところ、こういう押しつけって無理が出てくるのよ。何の偏見もなく、みんなが自由になりたいものになれたら、世界はずっと良くなると思うわ。
SNSも熱心にやっていますよね。フォロワーの数もすごい。多くのSNSをどうやって使いこなしているのですか?
現代社会ならではの別世界というところね。私たちは多くの時間をこの仮想空間につぎ込んでる。仮想空間なんだけど、あまりにもみんなが多くの時間を費やすので、現実でもある。でも結局みんなも私も、楽しいからやってるってだけ。ネット上の小ネタを拾うのも大好きだし、残念ながら今はなくなっちゃったけど、Vinesっていうアプリの動画を見るのもおもしろかったわ。ほかのおもしろ動画を見たり、ネタをシェアしたりするのも好き。そうすることで、なんというか、リラックスしちゃうの。家に帰って最初にするのは、InstagramやTwitterのタイムラインチェック。SNSのいい点は、自分の意見を言いやすいし、それをほかの人に聞いてもらいやすいところ。今は本当にいろいろなプラットフォームが用意されているわ。情報をくれるのは、TVの一チャンネルや1冊の新聞だけじゃない。TwitterやFacebook、Instagramのアカウントさえ持っていれば、誰もが自分の書きたいことを書くことができるの。私には多くのファンがいてくれるし、フォロワーもたくさんいるから、自分の意見をシェアするのには有利よね。大事な意見をSNSでシェアすることで世の中を変えることができるって、私は本当に思っているの。そうじゃない? 見てくれる人がいるなら、ぜひやりたいわ。
曲を書くとき、どういう感情に一番影響をうけますか?
残念ながら、悲しみね。大きな悲しみや怒りで感情的になっているときは、自分のことを書いたり表現したりするとすっきりするの。怒ったり活動的になったり、悲しみに暮れたり。でも、今、私の人生はそれほどドラマに満ちていないから、そういうことについて書くのはちょっと難しいのよね。ハッピーな気分で目覚めて、朝ごはんを食べて、家族と話をして、友だちと遊ぶ。恋愛はなし。だから曲を書くのが難しいの。悲しいときは、あんなに創造力が働くのに。どんなアートも何かをまとめることでできるものだけど、幸せなときは、ゴロゴロしてNetflixをチェックするくらいしかしないし。悲しみや恋愛について書くのはホントに簡単だけど、恋愛はとても裾野が広いでしょ。恋愛をしていると悲しくもなるし、やきもちも焼くし、ウキウキもするし、怒りもわくから……。
あなたに影響を受けている女の子たちに、アドバイスをいただけますか?
そうね、居心地のいい人と一緒にいることの大切さを伝えたいわ。周りをよく見て。あなたを好きでいてくれて、貶めたりしない人たちと一緒にいるようにするの。SNSで言えば、インスピレーションをくれる人をフォローして、変なコメントをする人はブロックしちゃうこと。私もブロックしたり削除したりするのよ。ネガティヴなアクションをする人やコメントは、すぐにブロックや削除しちゃう。私の世界にネガティヴな感情はいらないから。たとえそれが知らない女の子同士だったとしても、お互いに気分を高め合うのはとっても大事。私はただ、ほかの女の子をサポートしたいの。女同士ってどうしてもいがみ合いが多くなるから、それってとても大切なことだと思うわ。ほら、レッドカーペットでも、誰がおしゃれで誰のヘアがかっこよくて、誰がサイテーだったかとか言ったりするでしょ。